インディーゲーム開発は、時として「勢い」や「熱量」の産物だと言われます。しかし、ここにある種、異様なほどの「正確さ」をもってゲームを組み上げるチームがあります。 1級建築士であり漫画家でもあるヒヅメ氏、そして高校生時代に彼と出会い、現在はフルスタックエンジニアとして活動する手羽先氏。そこに医療機関の広報を務めるエリナ氏が加わった「テバサキゲームズ」です。 彼らのデビュー作『コメンテーター』が、なぜこれほどまでに「プレイしやすく、迷いがない」のか。その裏側には、原子力発電所の設計PMまで経験した建築士の論理と、それを完璧に実装する驚くほどの「設計図」がありました。 今回は、全く異なるバックグラウンドを持つ三人が、どのようにして一つのビジョンを共有し、チームとしての「正解」を導き出していったのか。その出会いから開発のスタート地点まで、飾らない言葉で語っていただきました。 ※このインタビューは、2025年1月30日に行われた内容です。現在と内容が異なる可能性がありますので読む際にはご注意ください。 Chapter 1. キービジュアルの挑発:「このおじさん、コメンテーターじゃないんですか?」 ――よろしくお願いします。本日はテバサキゲームズの3名に来ていただいておりまして、最初にこの3名のお名前と簡単な自己紹介をいただければと思っております。では、まず手羽先さんから、どうぞ。 手羽先:手羽先と言います。『コメンテーター』ではプログラマーを担当していて、普段はフルスタックエンジニアとしてAIプログラマーみたいな、AIプログラミングとかしてます。よろしくお願いします。 ヒヅメ:はい、テバサキゲームズでプログラム以外を担当しているヒヅメです。よろしくお願いします。普段は建築士として働いたり、あと漫画家として活動したりしています。どうぞよろしくお願いします。 エリナ:はーい。テバサキゲームズで広告とデザインを担当しております、エリナと申します。普段は医療機関で広報をやっております。どうぞよろしくお願いします。 ――今制作されている『コメンテーター』というこのゲームはかなり特殊なコンセプトで、目の付け所が非常に鋭い作品だと思っています。簡単にこのゲームの説明を話していただきながら、どういったところでインスピレーションを受けて、どういったスタート地点でこの開発が始まって行ったのをまずお聞きできればと思いますが、いかがでしょうか。 ヒヅメ:一番最初にコンセプト、このゲームがどういったところかっていうところからお話しすると、まずプレイヤーである主人公が、ゲームの世界でコメンテーターになって、ニュース番組に登場して、ニュースに対してコメントをしていくというゲームです。それに打ち合わせの際にどういうニュースに対してどういうコメントをするかっていうところをパズルのように選択をして、それによって本番の生放送で自分の発言が変わる。その発言によって視聴者の注目度であったり、スポンサーの満足度であったり、そういったものが変化しまして、そのスコアによって世の中が変わっていくっていうのを体験できるゲームです。 ヒヅメ:このゲームを思いついたインスピレーションは何だったかっていうところで言うと、私が思いついたわけではなくて、世の中に『The Republia Times(ザ リパブリアタイムス)』っていうゲーム、フリーゲームが既に存在してまして。『Papers, Please(ペーパーズプリーズ)』のルーカス・ポープさんが作っているゲームで、主人公が新聞記者なんです。紙面にどんなニュースを扱うか、どれくらいの大きさで扱うかっていうことで世の中が変化していくっていうのを楽しむことができるゲームです。そこを初めてプレイした時にものすごい衝撃を受けまして。すごく面白いゲームなんですけれども、時代が1950 ,60年とかそれぐらいなのかなっていう舞台設定で、かつ場所が多分…東ヨーロッパとかそこら辺の小さい軍事国家か何かなのかなっていうところだったんですね。日本人にとっては地理的にも歴史的にもちょっと遠いところでして、すごくそれでも面白いゲームなんですけど。もっとこのゲームをバッチバチと肌に感じるためには、もっともっと身近な舞台であった方が楽しいだろうなと思った時に、そういうゲームが他にはなかったので、作ってみたら面白いだろうなって思ったのがきっかけでしたかね。 ――確かに、日本に住んでるとやっぱテレビを通して朝も昼も夜も報道番組に触れる機会がすごく多いなと思うので、その辺のテーマ選定がすごく既視感がありました。すごく印象的で、インスピレーションのポイントがいいなと思ったところでした。 ヒヅメ:ありがとうございます。そうですね。できるだけ身近にっていうことだったので、新聞は今でもありますけど、インターネットの記事とか形を変えて世の中に影響をもたらすってなった時に、プレイヤーがあんまりこう疑問を抱かないっていうか、馴染みやすい媒体は何だろうって考えた時に、さっきおっしゃったように1日中どこかしらで流れているテレビニュースがやっぱり今でも馴染みやすいのかなっていうところでした。かつその中でもキャスターとかではなくてコメンテーターっていう、日本だと当たり前のようにいるんですけど、海外ではなかなか馴染みのない職業っていうんですかね。それを加え、それを主人公にすることによって、すごくローカル性ができたのかなと感じてます。 ――確かに今おっしゃるとおり、コメンテーターって日本独特のこの立ち位置だなと思いました。海外だと「アンカー」っていう立場が中心ですが、この日本の番組って司会の方がいて、コメンテーターが数人いて、それぞれの違った立場で話を聞いていくみたいな。そう思うと、このコメンテーターっていう立ち位置は面白いですね。 ヒヅメ:そうなんですよね。だからもう必ずしも何かの専門性を持った人である必要はなくて、例えばそのタレントさんであっても、視聴者が感じるところを代弁してくれるとか、共感してくれるとか、あとは珍しい視点を与えてくれるとか。そういったことでも役割として生きていけるっていうのがコメンテーターっていう職業のユニークなポイントだと思うので。そうすると、あの雑多なニュースを扱う時に必ずプレイヤーは「よく分かんないんだけどな」って思うニュースも出てくると思うんですけど、それこそ日本のコメンテーターが出くわす、何て言うんですかね、気持ちだと思うので、ちょうど良く疑似体験できるんじゃないかなと思いましたね。 ――私もネットで今出されている試遊版でプレイしてみたんですけど、このゲームって結構皆さん突っ込まれるところがあるのが、ちょっと今日お聞きしてみたいなと思ってたとこなんですけど、キービジュアルのおじさんは、あれはコメンテーターではなくてプロデューサーですよね?(笑) ヒヅメ:そうなんですよ。テレビ番組のプロデューサーなんですよね。元にしたゲーム『The Republia Times(ザ リパブリアタイムス)』で主人公の描写が一切ないんですよね。あくまで記事の紙面が出てくるニュースがこう、パンチリストみたいな感じで出てくるだけで、主人公の描写がないところが面白いなって思って。今回は主人公はあくまでプレイヤーの方なので、あんまりこう色がない主人公がいいな、できれば全部一人称視点で描きたいなっていうのがあったので、まず主人公はその時点で姿がない設定になりました。その後にプロデューサーとキャスターの女の子が必要だねっていう、なんで女の子かって言ったら、プロデューサーがおじさんなんで、バランスを取るために。さすがにゲームの見栄えのバランスを取るために女の子でないと華やかさがあまりにもないというので女の子を入れたんですけど、そういう中で決まっていった感じですね。 ヒヅメ:なのでキービジュアルを考えた時に出せるのが女の子かおじさんかしかいなくて、その時にその僕たち駆け出しにさえなれてないインディーゲームの制作ユニットですから、注目してもらうためには、やっぱりちゃんと目立わないといけないっていうのもあって。その時にキャラクターデザインいくつかあった中で、今回の採用されたプロデューサーの梅沢っていうイラストを最初に作った時に、メンバーの手羽先とエリナの反応がものすごい良かったんですよね。「こんなのいないよね、他に」「面白いね」ってなったんで、じゃあもうこのおじさん1本で全面に出してやっていこうっていうので、決まりましたね。そのあと自分たちでも突っ込んでたんですけどもういいんじゃない?って。(笑)。ゲームをプレイすればわかるしね。 エリナ:あれデザイナー的に言わせてもらうと、このおじさんのインパクトがあまりにもあるので、それだけでもう目を引くことができるんですよ。やっぱりゲーム業界ってすごくキービジュアルがすごいかわいい女の子だったりとか、すごい派手なキャラクターがたくさん出てきたりとかっていうのが多い中で、、ビジュアル的にすごい地味なおじさんが派手に出てくるっていう、あのビジュアルがすごく、いい仕事をしてくれてますね。 ヒヅメ:キービジュアルでカーディガンとポロシャツを着てるおじさんは多分一人もいないと思う。 一同:(笑う) ――手羽先さんはそれについてはどうですか? 手羽先:すいません。ゲーム大好きなプログラマー視点というか、プログラマー視点でも何でもないですけど、ゲーム好きな人からするとおじさんがメインビジュアルに見えるのって『ゼルダの伝説』にめちゃくちゃ近いなってふと思ったんですよね。『ゼルダの伝説』って主人公はあの男の子だと思うじゃないですか。「あの子ゼルダなんだ」って。でも全然違うっていう。 エリナ:違うの!? 手羽先:違いますよ。(笑) エリナ:マジか。 手羽先:っていうぐらいな。 ヒヅメ:男の子はリンクだよ確か。 手羽先:そう、リンクくんなんで。 ――しかしそういう意味で言うと、このキービジュアルはゲームのコンテクストも意外と踏襲しているとも言える深みがありますね。実際、皆さんおっしゃられているように、このキービジュアルってすごく目を引いて、他のゲームと比べて逆に埋もれてないですよね。実際その絶妙にちょっと不気味なこの方にすごい目が向くというか。 手羽先:ちょっと怪しい感じ出てますよね。 エリナ:すごいヒヅメが描いた時にすごい言ってたのが、そのいい人なのか悪い人なのかわからない絶妙なラインを狙ったって言ってました。 ヒヅメ:言ってましたね。 Chapter 2. バス停の運命:1級建築士、高校生エンジニアを「ナンパ」する ――キービジュの話につながるかわからないんですが、この『コメンテーター』という作品を示す上でお3方にお聞きしたい質問があります。このゲームを体現するためにどういった要素にフォーカスされてたり、作られてたりとかしたんでしょうか。 ヒヅメ:これはゲーム自体が言い出しっぺが僕なので、逆に手羽先くんから聞いてみたいですね。僕が知りたいな、むしろ。
渋谷の街が、10日間だけ巨大なゲーム機になった話 ― SHIBUYA GAMES WEEK 2026 レポート
こんにちは、SKOOTA編集部のイ・ハナです。 2月6日から15日までの10日間、東京・渋谷の街がいつもとは少し違う、不思議な熱気に包まれていました。今回私が足を運んだのは、街全体を会場とした都市型ゲームフェス「SHIBUYA GAMES WEEK 2026」です。 特定の会場に閉じこもるのではなく、渋谷の街を歩きながらふとした瞬間にゲーム文化に出会う。そんな「日常と非日常の境界線」を巡る旅のような10日間を、私が見た景色とともに振り返ってみたいと思います。 📍 Spot 1:PARCO MUSEUM TOKYO「PARCO GAME CENTER」 渋谷駅から徒歩で約10分くらい。皆さんご存じの渋谷PARCOの4階にありました。PARCO GAMES公式サイトより引用。 まず最初に向かったのは、渋谷PARCOの4階にある「PARCO MUSEUM TOKYO」。ここでは『PARCO GAME CENTER』というイベントが開催されていました。 「レトロゲーム」をコンセプトにしながらも、単なる懐古趣味に留まらないのがPARCOらしいところ。ファッション、音楽、アート、映像……ゲームにまつわるあらゆる表現が混ざり合う、まさに「ゲームカルチャー」そのものを体現したような空間でした。 個性豊かなブランドが並ぶPARCOの中でも、ひときわ目を引く華やかなビジュアル。入り口の前に立つだけで、自然と中へ吸い込まれていくような、ワクワクするエネルギーに満ちていました。「ここにはきっと楽しいことが待っている」と直感させてくれる佇まいです。 少し低めの天井の入り口を抜けると、想像以上に広々とした空間が広がっていました。当日はあいにくの雨でしたが、会場内は多くの人で賑わい、その熱気で少し汗ばむほど。 入り口付近のレトロゲーム試遊コーナーから奥のポップアップストアまで、新旧の作品がずらりと並ぶ光景は、まるで「大人のための遊園地」に迷い込んだかのようでした。 展示されていたのは、私の世代よりも少し前の時代のポスターやグッズ。最初は「珍しいものに出会えた」くらいの気持ちでしかなかったのですが、パックマンやドラゴンクエストといった伝説的なタイトルが並ぶ景色を見ているうちに、不思議と胸が熱くなりました。知らないはずなのに懐かしい。馴染みがあるのにどこか新鮮。そんな、時代を超えた普遍的な魅力に目覚めた気がするひと時でした。 もちろん今を生きる私たち、インディゲーマーためのインディーゲームコーナーも充実していました。今年作られたばかりのミニゲームや、リリースを控えたタイトルの試遊台には、多くの家族連れが。 お父さんやお母さんの「思い出」に連れられてきた子供たちが、最新のインディーゲームに夢中になっている。異なる時代の産物が一つの空間に混ざり合いながら、全く違和感なく共存している様子が、とても印象的でした。 ちなみにこの『PARCO GAME CENTER』は来週の月曜、3月2日まで開催とのこと。ということは、まだいけてない方はおそらく今週末が訪問できるラストチャンスかもしれません。 もしこの機会で行ってみるぞ!と思った方はぜひ私の分まで楽しんできてください…! 📍 Spot 2:SHIBUYA STREAM HALL「神ゲー創造主エボ進化2025 x ゲームクリエイター甲子園2025」 PARCOの洗練されたアート空間を後にし、次に向かったのは「渋谷ストリームホール」。ここでは、未来のスタークリエイターたちが集結する『神ゲー創造主エボリューション2025 x ゲームクリエイター甲子園2025 合同発表展示会』が開催されていました。 PARCOが「ゲームの文化」を楽しむ場所だったなら、こちらは「ゲームが生まれるエネルギー」に直接触れられる場所。そんな熱気あふれる現場の様子をお届けします。 実は私、渋谷ストリームホールへ行くのは今回が初めて。少し迷ってしまったのですが、エスカレーターの前に大きな展示会の案内ディスプレイを見つけ、ホッと胸をなでおろしました。 驚いたのは、これほどの大規模な展示と試遊台が揃っているにもかかわらず、入場が「無料」だったこと。インディーゲームを愛する人なら、これだけで胸が躍るポイントではないでしょうか。 会場は3階構成になっていて、下の階は企業相談スペース、中層階と上層階は学生たちの作品展示がメイン。 特に中層階の密度は凄まじく、一歩進むのも一苦労なほどの人だかりでした。 一方で、最上階の発表ステージ付近は少しゆとりがあり、下でゲームをたっぷり遊んだ後に、ステージを眺めながら一息つく……といった、メリハリのある楽しみ方ができたのがとても良かったです。 今回試遊した中で特に印象に残ったのは、振り子の原理を応用して出口を目指すパズルゲームと、中学時代の失恋トラウマを乗り越えるというユニークなノベル+アーケードゲームでした。 何より驚いたのは、多くのタイトルが作品をちゃんと完成させているという点です。全員ではないにしろ、多くの学生たちが「ゲームをしっかり最後まで作る」という意識を持って制作に励んでいました。短時間のプレイでも着実な満足感を得られるよう設計されている点に、メンターの方々の教えや、彼ら自身の真摯な姿勢が透けて見えるようでした。
言葉の壁は「情熱」で越えられるのか? 台北で出会った「韓国インディー」の現在地 ― Taipei Game Show 2026 レポート
ニーハオ! SKOOTA編集部のイ・ハナと申します。 皆様、モブくんが届けてくれた「私の魂が太ももに挟まれた話(G-EIGHTレポート)」や「お気に入りゲーム紹介(TpGSレポート)」は、もうお読みになりましたでしょうか? 彼が台湾の熱気に包まれながら楽しんでいたその隣で、実はわたくし、少しだけ冷や汗をかいておりました。 なぜなら私、中国語はおろか英語も自信がないという、まさに「語学力:サバイバルレベル」の状態で台湾に上陸してしまったからです。 「まあ、何とかなるでしょう!」という謎の自信は、空港に降り立った瞬間に揺らぎ始めました。しかし、ここで奇跡が起きます。なんと、台湾のゲーマーの方々の多くが、私の拙い日本語を理解してくださるではありませんか! アニメやゲームの影響でしょうか、簡単な日本語であればスムーズに意思疎通ができる環境に、私は心底救われました。 とはいえ、やはり自分が直接、海外のクリエイターに深い話を伺うのはハードルが高いのも事実。そんな中、今回のTaipei Game Show(以下、TpGS)のインディーゲームエリア「Indie House」には、驚くほど多くの韓国インディーゲームが出展されていました。 普段、日本のイベントではなかなか接する機会のない母国のゲームたち。言葉の壁に少し疲れていた私にとって、そこは開発者の方と直接深い話ができる、数少ない貴重な場所でもありました。 というわけで今回は、あえて注目の期待作『NAMMO』などは(モブくんのレポートに譲るとして)少し置いておきましょう。私が会場で出会ったのは「まだ見ぬ韓国インディーゲームの可能性」といっても過言ではない、4つの作品です。それでは、ご紹介させていただきます。 🦀 スーパーキングクラブシミュレータ:235円で買える、破壊とカニのユートピア まず最初にご紹介いたしますのは、Skago Gamesさんが制作した『スーパーキングクラブシミュレータ(Super King Crab Simulator)』です。 タイトルからして既に「何か」が起きていますが、内容はさらに強烈です。プレイヤーは巨大なズワイガニとなり、人間に捕らわれた同胞を救い出すために、平和な海岸都市を慈悲なく破壊し尽くすという、なんともぶっ飛んだコンセプトのアクションゲームとなっております。 一見すると、いわゆる「バカゲー(褒め言葉)」の類に見えますし、実際にそうなのですが、コントローラーを握ってみると、その手触りの良さに驚かされました。 カニになって街を破壊するなんて、言葉にするとなかなか想像しにくい体験ですが、あえて例えるなら昔遊んでいた『Prototype』シリーズや『GTA』シリーズといった、かつてのオープンワールドゲームを思い出させるプレイ感に近い印象でしょうか。 人や建物がひしめく箱庭のような空間を、カニ独自の動き(とはいえ非常に高速です!)で縦横無尽に駆け巡り、目に入るオブジェクトを片っ端からハサミで粉砕していく。「新しい」というよりは、どこか「実家のような安心感」すら覚える、プリミティブな破壊の楽しさがそこにはありました。 そして、私がこのゲームを是非レポートに残したいと思ったもう一つの理由は、ローポリゴンのシンプルなグラフィックの中に隠された、驚くべき「ディテール」へのこだわりです。 これはもしかすると、私のような韓国出身のプレイヤーにしか伝わらないポイントかもしれませんが…マップ上の建物のデザインや看板のテキストが、思わず笑ってしまうほど「リアルな韓国」なのです。 あえてローカライズされずハングルそのままで残されておりましたが、飲食店のメニューや巨大な商号、そして何より、お店や住宅の裏手に雑多に置かれた室外機や、それを囲むブロック塀の質感。日本や台湾の風景とは微妙に異なる、しかし韓国人なら誰もが「あるある!」と思える生活感あふれる風景が、絶妙な解像度で再現されています。この「知っている街」をカニになって破壊する背徳感は、なかなかに得難い体験でした。 開発者の方の遊び心も随所に光ります。「美味しく破壊しろ」というキャッチコピーや、レベル(Level)の表記をキングクラブにかけて「Kevel」とするなど、思わずクスリとしてしまう小ネタが満載です。こういった細かい発見が積み重なることで、単なるアクションゲーム以上の愛着が湧いてくるのですね。 そして何より強調したいのが、そのコストパフォーマンスです。Steamでの価格はなんと235円(日本基準)。 同胞を救うために街を壊すという明快すぎるストーリー、誰もがすぐに楽しめる直感的な操作、そして作り込まれた小ネタの数々。これらがこの価格で提供されていることは、ある意味で奇跡的です。「安かろう悪かろう」ではありません。「暇だし、カニになって街でも壊してみるか?」という軽い気持ちに、全力で応えてくれる最高のエンターテインメントなのです。 もし今、あなたが少し退屈しているなら、迷わずこのカニの甲羅を被ってみることをお勧めいたします。 🎒 下校道:ノスタルジーという名の恐怖、2010年代の教室にて 次にご紹介いたしますのは、先ほどの陽気なカニの世界とは打って変わって、静寂と闇が支配するサバイバルホラーゲーム、『下校道(Hagyo-gil: The Way Home)』です。制作は、「スタジオ不完全燃焼」さん。 会場でプレイできたデモ版は10分ほどの短い内容でしたが、その密度たるや、短編映画一本を見終えたかのような重厚な体験でした。 物語は至ってシンプル。ある日、学校の教室で一人目覚めた主人公が、外へ出るために手がかりを集めて脱出を試みるというものです。何の説明もなく放り出される導入には戸惑いますが、探索を進めるにつれ、古びた設備や封鎖された出入り口といった不穏な違和感に気づき、「この学校はどこかおかしい」と肌で理解することになります。 そして最後には、制服を着た女子学生の姿をした「何か」が現れ、プレイヤーは手に持ったモップで必死に抵抗することになるのですが…ええ、私は勝てませんでした。モップを握りしめたまま、無惨にもゲームオーバーとなりました(涙)。 「見知らぬ場所に閉じ込められる」という設定自体は、ホラーゲームにおいて決して珍しいものではありません。しかし、この作品が他の追随を許さない圧倒的な魅力を持っているとすれば、それは「狂気的なまでの空間の再現度」にあります。 先ほどの『スーパーキングクラブシミュレータ』が、シンプルなグラフィックの中に記号的な「韓国らしさ」を込めた作品だとするなら、この『下校道』は、空気や湿度、当時の時間までもそのままゲームの中に閉じ込めようとしたかのような、恐ろしいほどのリアリズムを追求しています。 舞台となるのは、おそらく2010年代の韓国の中学校、あるいは高校でしょうか。 まさに私が学生時代を過ごした時期と重なるその風景は、ただ「リアル」なだけではありません。教室の空気の匂い、廊下に響く足音、机の質感…視覚情報だけのはずなのに、かつての記憶が呼び覚まされ、五感が刺激されるような錯覚に陥りました。国籍を問わず、インディーゲームという枠組みの中でこれほどのグラフィック表現にお目にかかることは、そうそうないでしょう。 ただ懐かしいだけなら良い思い出ですが、その「あまりにも慣れ親しんだ空間」に、少しずつ異質なノイズが混ざり込んでいく過程こそが、このゲームの真の恐怖です。 よく出来たホラー映画の導入部を自らの足で歩いているかのような没入感。残念ながら現時点ではSteamなどのオンラインストアには公開されていないようですが、いつか製品版として世に出た暁には、ぜひ日本の皆様にもこの「美しくも恐ろしい下校道」を体験していただきたいと強く願っております。 🍽️ GLUTTONY:食欲こそが力! 悪魔的「満腹」ハック&スラッシュ 三番目にご紹介するのは、Team
