ヒストリカお座敷とは:第15回 京都ヒストリカ国際映画祭 司会 京都ヒストリカ国際映画祭のヒストリカお座敷のセッション、ひとつめを始めさせて頂ければと思います。 「アニメとインディーゲームの可能性」というタイトルで、株式会社room6の木村さんと、株式会社スクーターフィルムズの原田さんにご登壇いただいております。それではよろしくお願いします。 木村 それでは、はじめさせていただきます。まずは登壇者の自己紹介から始めさせていただきます。 私の方が木村と申します。株式会社room6の代表をしております。1972年生まれ、京都出身、地元の出でございます。学生時代はゲーム会社に就職したかったんですが、そのときはかなわず、そこから全くゲーム以外の業界ですね、業務システムの、金融系とかそういう全然関係無い方のエンジニアとして、2009年まで仕事してたんですけど、その後、iPhoneが登場したのをきっかけに、iPhoneのアプリを作る会社を、(京都の)出町柳で起業しました。で、その後、2013年ごろよりモバイルゲームですね、モバイルのインディーゲーム開発を開始して、それから10年ぐらいゲーム開発をやってます。その傍ら、日本で開催されるインディーゲームイベントですとかに多数出展させていただいたりとか、2017年より任天堂Switch向けのコンソールゲームの開発を手がけたりしてきました。インディーゲームの方は、販売事業であるパブリッシャーも始めております。 原田 スクーターフィルムズの代表の原田と申します。今回は木村さんに呼んでいただいて、この会に参加させていただいてます。私は76年兵庫県の生まれでして、学生時代から10年間ほど京都におりました。ご多分にもれず、自主映画と演劇にどっぷり浸かっておりました。で、学生の最後ごろから、当時Youtubeとか出始める前だったんですけども、配信向けのドラマシリーズがこれからは行けるんじゃないかと思って、京都中の劇団の役者さんを集めてドラマシリーズを作ったりしてたんですけれども、これがまったくマネタイズできなくて、力尽きまして。その後、東京に行って、アニメ会社でプロデュース業務なんかを始めました。そこで飛び込んだ会社が、ちょっとそのアニメ業界の中で言うと、アニメを作るというよりかは、アニメを使って何をするか、みたいな方向に特化したような会社だったんで、周辺ビジネス、ライセンス事業も含めて色々経験を積ませていただいて。その後、アニメ企画の会社立ち上げに関わったりしている中で、2021年にツインエンジンのグループスタジオの一つとしてスクーターフィルムズを設立して現在に至る、というような形です。 木村 はい。ということで、では次に、両者の事業ですね、どういうことをやっているかということのご紹介させていただきます。まずは弊社room6のご紹介させていただきます。 まず株式会社room6ということで、先ほど紹介させていただいたように(京都の)出町柳を拠点として活動するインディーゲームの開発とパブリッシングを行なっているところで、2013年より開発してます。特徴としては、大半が非ゲーム業界の人間で構成されている。少しゲーム業界出身者もいるんですけど、おそらく80%か90%ぐらいがゲームの会社から来てない人間で構成されています。ゲームとしてはピクセルアール、いわゆるドット絵を用いた美しいグラフィックスのものを中心に開発をしているような会社でございます。 2019年よりパブリッシングもやっていこうということで、2020年にヨカゼというインディーゲームのレーベルを作って、そちらの活動も開始しております。 このレーベルについて軽く説明させていただきますと、ちょっとふんわりした概念なんですけど、いわゆる情緒あるゲーム体験ってことで、ストーリーですとか世界観ですね。いわゆるゲームメカニクスとかではなくて、本当にその世界観とかアート性とか、そういったものを重視するようなゲームだけを集めてリリースするということで立ち上げました。このイメージイラストにあるように、名前もヨカゼということで、しっとりした暗いグラフィックタッチのゲームが多いということで、「なんとなくこうヨカゼっぽいよね」みたいな感じが出来上がりつつあるかなというところです。そういうことで、ゲームの世界に浸ってしまうようなタイトルを厳選してパブリッシングをしています。 で、room6自体はどんなゲームを作って出してるんや、ということで、簡単に説明させていただきます。 まずは「アンリアルライフ」というゲームが代表作ということで、2020年にリリースしました。「触ったものの記憶を読み取る力がある少女と、おしゃべりできる信号機が冒険するアドベンチャー」で、個人のゲーム開発者、本当に一人の開発者さんが4年かけて制作しました。ゲームのシナリオ、プログラミング、音楽に至るまでほぼ一人で開発したゲームです。こちら2021年に文化庁のメディア芸術祭のエンターテインメント部門の新人賞を受賞しております。 あと、リリース前なんですけれど、「狐ト蛙ノ旅 アダシノ島のコトロ鬼」というゲームですね。3Dゲームなんですけれども、日本風の不思議な島を舞台に描かれるアクションアドベンチャーゲームです。こちらはうちとしては珍しい3Dゲームになってます。開発しているリアスさんという方が、背景アーティスト、世界観アーティストでして、3Dなんですけど、全体に手描きのような質感をしたアートが特徴です。これは本当に手描きで全部描いてるんですけど、手描きの3Dティクスチャーを用いたゲームです。すごくいい感じのエモーショナルな表現になってます。 原田 こちらのアート、素晴らしいですよね。これ一枚ですごく引き込まれます。 木村 本当にね、これいいんですよね。 非常に期待されている作品で、再来年か来年ぐらいに出したいと思ってるんですけど、すごく手間がかかっているので、少しお待ちいただければと思います。 こちらもうちの代表的な感じですけど、ピクセルアートの作品で「幻影AP-空っぽの心臓-」ということで、こちらは、ボカロPとかをされている、はるまきごはんさんというミュージシャンがおられるんですけど、彼の世界観をゲーム化したもの、彼の世界を歩けるアドベンチャーです。 我々いろんなアーティストさんと組んでゲームを作ってるんですけども、こういうミュージシャンとか、音楽されている方ともゲームを作ったりしているということで、こちらは本当にピクセルアート、ドット絵の世界を2Dでペコペコ歩きながら進んでいくゲームになっています。こちらモバイルで無料で遊べるので、ぜひよろしければあとでダウンロードして遊んでください。 はい、で、こちらは開発中のゲームなんですけど、「ピギーワン SUPER SPARK」ということで、後ほど事例で少しお話させていただくんですけど、アニメーターのはなぶしさんという方が、イラストで表現してきたピギーワンというIPの世界観があるんですけど、そちらを横スクロールアクションゲームにするというようなプロジェクトになっております。はなぶしさんは、「ずっと真夜中でいいのに」とか、人気のミュージシャンのMVを手掛けてらして、すごく有名になられたクリエイターですね。 最後に「ローグウィズデッド」って弊社の完全にオリジナル企画開発で、モバイル向けの放置育成ゲームです。こういうのも作っております。これ2022年にリリースさせていただいてるんですけど、昨年は100万ダウンロード達成しまして、昨年のGoogleの臨時ゲームフェスティバルっていうイベントではトップ3、まあ最高賞なんですけど、そちらを受賞しました。年末にもGoogleプレイベストオブ2023のベストインディーゲーム部門の大賞をいただいたということで、すごく評価が高いゲームになっております。 こちらもピクセルアートではあるんですけれども、えっと紹介してもいいのかな?ちょうどこのイラストを書いた弊社のイラストレーターがそちらにおります! という感じで、こういうモバイルゲームを作っておりまして、その他、いろんなゲームをリリースしております。今、16タイトルですけど、これ以外にもいくつかプロジェクト進行中ということで、だいたい20数本ぐらいがプロジェクトとしては、進んでたり、リリース済みであったりというような感じで、小さい会社なんですけど、結構意外といろいろやっています。 「インディーゲーム」とはなにか? この流れで、ちょっとこの場でインディーゲームについて軽く説明させていただけたらなと思うんですけど、ちょっと定義が曖昧と言いますか、定義を語りだすと戦争が起きてしまうというか、人によってインディーゲームの定義がバラバラなんですけども、広義の定義としましては、もともと大手ゲーム会社からリリースされるようなゲームではなくて、個人や小規模のチームで開発されているゲームということで、おそらく、あまり異論がないところとしましては、セールスとかマーケティングを重視したゲームではなくて、ゲームを作ろうという動機が「自分が作りたい」「こういうのを発表したい」というような、思いを重視して開発を行っているようなものが、インディーゲームなのかな、というところです。 企業の財務ですとか決算ですとか、マーケティングですとか、そういうものに左右されないゲーム開発を行うということで、ある種リスクを度外視して製作されることが多いというものです。ハイリスクだと思うんですけども、だからこそ先鋭的であったりとか芸術性が高いものであったりとか、結構イノベーティブなチームが多くて、昨今インディーゲームの方が面白いのがあるよねっということで、人気が高まってるジャンルかなと思います。 有名なものとしては「アンダーテイル / UNDERTALE」ですね。ものすごく世界中で人気でましたけど、こういうゲームですとか、「カップヘッド / Cuphead」っていうピクサーやディズニーアニメみたいなやつとか、「マインクラフト / Minecraft」も元々インディーゲームで、一人で作られてる。 原田 マインクラフトはインディーゲームっていう感じしないですよね。 木村 そうですね。今や世界一売れているゲームになりましたんで。ただ、出発点としては一人で作られたということで、広い意味ではインディーゲームと捉えられています。 あとは「ヴァルヘイム / Valheim」という北欧を舞台にしたサバイバルクラフトゲームですとか、「スターデュー バレー