この記事はポッドキャスト番組として以下のメディアで聴くことができます。
ゲスト、パーソナリティ
ゲスト:たろちん
1985年生まれ。本名・大井正太郎。 2008年、ニコニコ動画で「たろちん」としてゲーム実況を開始。Webニュースサイト「ねとらぼ」のライター・編集者を経て、現在フリー。 お酒をこよなく愛する人間だったが、2022年に「重症急性膵炎」という大病を患い膵臓の3分の2が壊死する。現在は生涯禁酒の身。
パーソナリティ:しおひがり
イラストレーター / 漫画家 1989年生まれ。東京都在住。 淡いタッチで描かれたユーモラスでロマンティックなセリフを言う女の子のイラストが特徴。『チープアーティスト』を自称。 学生時代にTwitterへのイラスト投稿やUstreamでの生配信を始める。卒業後は素材メーカーへ就職するも、仕事中にサボって描いたイラストやショート漫画がバズり依頼が増え始めたことから一念発起して退社。専業の『チープアーティスト』となる。
SKOOTA 編集部員:迫田祐樹
通信会社、総合広告代理店を経て、アニメ企画&制作会社を起業し、MV〜映画の映像プロデュース。2021年に京都に移住し京都のエンタメ産業の盛り上げにも着手。直近ではマンガやオーディオのエンタメ領域にも従事。オーディオドラマ、webtoonの企画&制作中。加えて複数のエンタメ会社のプロデューサーやアドバイザーをつとめる。
全体の目次
#01
・たろちんとしおひがりの出会い
・酒を飲み交わす青春の日々
・釣りバカ日誌を見る母に学校に行かないことを告げる中2のたろちん
・テキストサイトをやる中で友達を作るために大学にいく
・何者でもない自分を自覚し始める
・有名実況者の腰巾着で繋がりができ始める
・その繋がりの中からライターの誘いを受ける
・悲しい目をして街をさまよい歩く時期に
・いつの時代に聴いても普遍性があるエレファントカシマシ
#02
・ドリキャスからインターネットに入る
・「先行者」を面白おかしくいじった「侍魂」との出会い
・伝説のしおひがりのモンスターファームUSTREAM配信
・居心地の良い村がインターネットにあった時代
・コラボが否定的だった時代もあった
・インターネットをやってるだけでクラスタや人間性を表現できた
・インターネットが自分のものじゃなくなった感
・40代50代でも「たろちん」でお届けしていくしかない
・星野源に教わったこと
・薄めの哲学を塩でいただく時期にて
・しおひがり、たろちんの手が震えてないことに安心する
#03
・生き残ったが人生観、死生観は変わらないことを確認した
・「死にかけたが変わんなかったぞ」ということを言える権利をもらった
・格ゲーをやるようになった
・コロナ禍で逆に安心できたこと
・見ないふりをするのがしんどい
・どうせ悩むしどうせつらい
・意味のある人生を送るために行う翻訳
・「お前の文章は読みやすいわ」と言ってもらうことが嬉しい
・面白いポイントを説明したくなっちゃう
・事実だけではなくて、キャッチーさが必要
・右脳的な意味を、左脳的な言語を用いて伝えたい
生き残ったが人生観、死生観は変わらないことを確認した
しおひがり
でも、せっかく拾った命だからね。
たろちん
そうなんですよ。
しおひがり
なかなかもう一機あると思わないから。
たろちん
だからね、逆に言うと困ったっていうのはある、生き残って。生き残って唯一の武器というか、他は全部捨ててべットしてた「酒」というものがなくなっちゃったから一回空っぽになるわけで、まさかそういう風になると思ってない。その、中島らもじゃないけどさ。俺は死ぬまで酒を飲み続けるんだっていう。酒飲んで死ぬって言うか、死ぬならステージの上で死ぬじゃないけど、そういう覚悟をちゃんと持って俺は酒飲んでいるつもりだったから。生き残った上で酒をやめるっていう未来は1ミリも考えたことなかった。
しおひがり
なるほどね。
たろちん
それになるくらいだったら飲まないしっていうのは結構あったから、そこを0からやり直すっていうのは結構俺の中では多分みんなが思っている以上にでかくて。
しおひがり
そうかもね、うん。
たろちん
だから仕事とか一回辞めてもう一回フリーランスやってみるかなっていう。これはよく言ってんだけど、膵臓もなくなったし、職も無くしてみるか、みたいな話。
しおひがり
色んなものを失くして初めて分かるものってあるからね。
たろちん
なんかね。そういう。だから欠落を埋めるために酒飲んでたものが欠けてしまったから、また違う埋め方を探さなきゃなって言うので。
しおひがり
そうだね。
たろちん
欠けた部分を埋めるピースを色々探してる感じ。
しおひがり
どう?膵臓をなくして見えてきた景色ってある、何か?変わったわけじゃない、結局、手の震えも止まったし。退院した直後、会いに行ったじゃん、たろちんの家に。そしたら「ようこそ」って言って出てきたのが知らんジジイだったから、俺はめちゃくちゃびっくりしたのよ。
たろちん
ジジイがね、ふらふら出てきたからね。
しおひがり
フラフラのガリガリの、なんかしかもハゲてるジジイが出てきたからびっくりしたのよ。
たろちん
そうでしょう。今だいぶ戻ったでしょう。
しおひがり
いや、もう今はだいぶパブリックイメージに近いたろちんに戻ったよ。いや良かったよほんと。昔はもう顔が月みたいに丸いって言われてたのに、マジでさガリガリのさ、知らん爺さんがさ、手すり持ちながら歩いてきた。
たろちん
杖ついて歩いてた時だ。
しおひがり
ね。じゃあほんと生まれ変わったみたいな感じだろうからさ。
たろちん
いや、だからなんだ、俺これは結構予感してたんだけど、入院中から。たぶん生き残ってなんか「人生観変わったでしょう」みたいに言われるんだろうなとか思ったし、何なら俺も変わるのかなとちょっと期待もしたんだけど、まあ変わんなくて、やっぱり。「あーもう酒なんか大嫌い」とかならないし、あの時の自分は何か間違ってましたね、とか全く思わないし。で、逆に死生観変わるかっていうと別にそういうのも変わらないんでね。人間が何か変わることはなくて、今でも何かめちゃくちゃすべったりしたら「死にてぇな」とか思うし。
しおひがり
めちゃくちゃあるね。
たろちん
なんか明日の予定面倒くさいね、やだな、死にたいなみたいな。会社爆発すればいいのにみたいな。消えたら楽だなみたいなの、何にも変わんなくあるし。何て言うのかな。何も変わらんよっていう感じ。だから人間の一番でかいことが「死ぬ・生きる」かなと思うんだけど、それをかすめても変わらないってことは人間って変わらないんだなということを凄い思った。確認したっていう感じ。やっぱ変わんないじゃんみたいな。だからそのさ、何か経験してないことってやっぱり言えないから。何か見てない映画を叩くの良くないみたいな、あんじゃん。一応俺は死の世界をちょっと見てきたから。
しおひがり
ちょっとそうだね。
たろちん
言えるようになったなっていうのが一番、変わった。
しおひがり
ああ、なるほどね。
たろちん
死にかけた時こうなるみたいな言説に対して、俺は死にかけたけど変わんなかったぞ、とかってことを言える権利もらったかなっていうのが、一番変わったことで。そういうことを何か言えたらいいかなと思って。
しおひがり
結局変わんないんだっちゅうね。
たろちん
そうそうそう。だから何かそういうもののせいにしちゃいけないかなっていうのもあるし。
しおひがり
確かにね、なるほどね。まあじゃあ、すぽっと酒がなくなったっていう。酒とタバコ、なくなったって感じか。
たろちん
なくなったね。
しおひがり
なんかそのオルタナティブな存在、できた?そういえば。
格ゲーをやるようになった
たろちん
だから変わったか分かんないけど、格ゲーとかやるようになった。
しおひがり
ああ、そうだよね。
たろちん
何かふとストリートファイターやってて、何か今までってゲーム配信とかそれこそ僕やってますけど、ずっと酒飲むついでにやるもので、酒のつまみにゲームをやってるだけだから、ぶっちゃけ何でも良かったんですよ。何ならゲームない方が酒に集中できていい。主であった酒がごっそりなくなっちゃったから、ゲームが割と主になってきて、面白いゲームをやりたいなとか。ゲームやる時に何か対人格闘ゲームでちゃんとこう上手くなろうとしたり。
しおひがり
すごいね。その色々損なった結果、そこに改めて向き合うっていう。
たろちん
まあ、だから第1志望落ちたから第2志望入ったみたいな感じで。やった!良かった!とは別にそこまではなってないんだけど。それしかないし、それ一生懸命やるかみたいな感じで今やってるから。
しおひがり
いいね。いやでも俺こないだそのtwitchでやってんじゃん、よく。そのたろちんの配信たまに見てるけどさ、もう普通にめちゃくちゃ上手いからびっくりする。普通に格ゲーマーの動きしてるからさ。
たろちん
昔に比べたらだいぶ。
しおひがり
もうマスターでしょ?
たろちん
マスター、まではいけない。まあね、それで別にプロになるかつったらならないし。
しおひがり
いやでも、あれはすごいよ。あれはだから震える手ではできなかったわけだから。
たろちん
それはそうかもしんない。そういうとこが変わったね、すごいね。
しおひがり
なんかそれだけでかいんだよな。俺もだからもう酒ほとんど飲んでないよね、最近は。
たろちん
うん、言ってたね。
しおひがり
でも俺にとってその酒って別にそこまで大きな存在じゃなかったから、別に何かなくてもいいやっていうので、すっとよ、もう。まあ別に今も完全に飲まないわけじゃないんだけど、何かすっとやめたから。
たろちん
いやデカイですよ、やっぱり。なんかね。結構、四六時中物を考えてしまう性格があって、何つうか無限に心配ってできるじゃん。
しおひがり
そうだね。
たろちん
そういうこととかをとことん考え続けてしまうから、それを切るために酒を飲んでたんだよね、やっぱり。
しおひがり
なるほどね。
たろちん
不安を払拭するというかもうこれ以上考えると疲れちゃうから、一回酒を飲んじゃおうっていう。究極、酒を飲まなくても、そういう思考の切り替えができる人はいると思うんだけど、俺はそのトリガーを酒っていうのにある時期から、自分で設定したことで結構切り替えるというやり方にしてたから。なくなるとやっぱ、トリガーをまた探さなきゃいけないというか作らなきゃいけなくなって。逆に酒飲む代わりに格ゲーに没頭してるのかもしれないな。
しおひがり
それあるかもね。うん。俺もね。でもね、切り替えるという発想がなかった、確かに。俺は徹底的にもう直視することにしてるから、不安を。だから俺、それで言えば不安は常に抱えてて。だからどんな時も忘れたことがないし、起きた瞬間にそれを思い出してうわってなるみたいなのを常に抱えてるから。
たろちん
いや、それしんどくない?
しおひがり
しんどいよ。俺もどうすればいいかわかんない。でもそこでやっていけるだけのたぶん精神的なタフネスっていうかはあるんだと思うけど、そこ切り替えるみたいな発想に至ったことなくて。でもまあわかんないけどね。俺もうだから精神的に強いっすよって言ってて、いつかぶっ壊れちゃうかもしんないから。何かね、巨大な何か悩みとかができた時にね。今まではどっちかっていうと、俺のそのメンタルの保ち方って、メンタルHPってあげらんないと思ってて。ただ、メンタル回避力を上げられると思ってて。直撃を避けるっていう。
たろちん
衝撃をね、減らして。
しおひがり
そうそうそうそう。身体をこうねじってって心をねじることによって、その衝撃を受け流すみたいなのに特化してるから、HPは別に高くなくて。こう貫かれると普通にもう心が死ぬのかもしれないけど。
たろちん
ああー、確かにそうかもしれない。
しおひがり
やっぱりいろんなことを勉強して知識をつけて、その回避力を高めるっていうのが俺の最適解かなとは思っているんだよね。
たろちん
なるほどね。だから自分の中で多分ロジックを作って納得とかもできる。できるというか、そういうの上手いしね。これってこういうことだよねって軽く結構言語化できるし。
しおひがり
そうだね。わりと得意な方ではあるかなと。
たろちん
うん、確かに。でもそれがしんどいんだよね。
しおひがり
でもさ何か俺はコロナ禍あったじゃん、ここ3年。コロナ禍のある時期すげえ幸福感があったの。俺たちって基本的に引きこもりなわけじゃん。家にいるわけだよ。だからコロナ禍でもう完全にガジガジに外出を自粛してくださいね、っていう時期もあんま変わんなかったんだよね。俺は大体、そもそもリモートワークだったし。リモートワークって言うか会社に出勤するみたいなことはないし、大体買い物もAmazonですよ、みたいな。
たろちん
まあ、わかります。
しおひがり
そんな感じでほとんど家を出なくて。その時期ってみんな、俺みたいなイラストレーターの人たちって結構みんな仕事なかったんだよね。仕事一斉にもうみんななくなっちゃったわけ。だからみんな家にいてみんなゲームやってるみたいな。でまあ何かだから、自分も仕事ないんだけど、みんなないじゃんっていうの、逆にすごい安心したんだよね。で、俺もう常に抱えてる不安ってやっぱフリーランスであること。で、俺って結構もともと会社員志向って言うか、わりと安定志向だから。
たろちん
根がね。
しおひがり
だから俺の最大の人生のギャンブルって、やっぱりその仕事を辞めてチープアーティストになるってことだったんだけど。
たろちん
そうっすよね。
しおひがり
そう。そっからその気楽さみたいな、仕事のプレッシャーみたいなのはかなり減ったけど。やっぱり会社の時と比べて。でもその代わり経済的な不安定っていうのは常にあるみたいな。
たろちん
そうよね、そう。
しおひがり
だからその経済的な不安ていうのが、常に俺の後に付きまとってるやつだったんだけど、このコロナ禍の一瞬だけ、そこの不安ていうのはなくなったんだよね。逆にみんな同じやんけってなって。補助金みたいなので、一応カバーはしてくれてたから、だから凄い何か安心してたんだよ、まあ数カ月だけどね、もちろん。
たろちん
ああ、なるほどね。
しおひがり
だから、その状態がキープされるっていうか不安がないってそういう状況なわけ。確かにだからここ10年でもう初めて久々に経験した、その何の不安もない状態。そこの時期って、俺すごい幸せだったんだよね。
たろちん
だから、やっぱ2億貰ったら、絶対に運用して一千万もらい続けるね(笑)。
しおひがり
そうだね。年利5%で運用しちゃうと思うんだけど。そう、だから、そこで切り替えられるっていう術があるんだったら、そういうテクニックがあるんだとしたら、それは俺も欲しいなって思ったわ。別に俺は酒とかさ、薬物とかそういうのにいかないけど。そういうストリートファイターみたいなさ健全なものもあるわけじゃん。だからそういうので切り替えてる人はいるんだろうなって思うと、何かそれは追求してもいいなと思った。
たろちん
何つうか、究極、それ全部さ、なんか気になってるだけで、不安から目を背けてるだけというか。
しおひがり
ああ、なるほどね。
たろちん
あるんだけど見ないフリをするのがしんどいわけよ。見ちゃうから、どうしても、あると。
しおひがり
そうだね。
たろちん
何とか意識をそらして少しでも考えないようにする為に酒飲んだり格ゲーやったりするわけで、ずっと後にはあるんだよね。だから何つうの、それが結局ストレスを緩和できてるのかは自分でもよく分かんない。
しおひがり
あ、そうだよね、まあそっか結局根本的なね。その不安に対処しないと。
たろちん
今、まさに会社やめてフリーになったからさ。今はなんせ僕は不安。
しおひがり
不安あるよね。
たろちん
大丈夫かな、みたいな。だからそうすると何かさ、がむしゃらにやんなきゃみたいな感じで、わりと夜中まで仕事してみたりするけど、俺はそんなに仕事したいから会社を辞めたわけじゃないのになみたいな葛藤もあって、やっぱ難しいよ。かといって1日ぼーっとしてると、またその家庭もあったりするからさ。こんなんじゃダメだとかやるのもなんか自分を追い詰めてよくないんじゃないかって言って、そういうループに入るのが嫌だから一回ストリートファイトやろう!っていう誤魔化し方を。
しおひがり
別の道にね。
たろちん
そうですね。前のそれが一回、酒飲んでお笑いの動画見ようとかだったんだけど、それが出来なくなったからっていう感じ、ですね。
しおひがり
そうだよね、そこの経済的な不安から逃げらんないよね。やっぱりね。フリー、クリエイターはみんなそうだと思うけどね。逆にその一切気にせずに生きてる人もいるっちゃいるけど、自分がいくら稼いでるか分かねぇみたいな。
たろちん
ね。それできるのってやっぱもう性質だからさ。
しおひがり
性質だね。
たろちん
変わんないんだよね、だから、2億とか10億とか持っても何かそういうような悩みとかあるんだろうなと思うしさ。
しおひがり
多分そうだろうね。
たろちん
変わんないんだろうなと。
しおひがり
確かにな。まあでもやっぱ、一緒に2億稼ごう(笑)。
たろちん
そうだね。
しおひがり
今年は。
たろちん
一旦ね。
しおひがり
一旦2億稼いだらちょっとセーブできると思うから、やっぱり。
たろちん
一瞬の安寧の為に、酒飲んだり2億稼いだりするんですよ。
しおひがり
そうそう、人はね、やっぱ。
たろちん
そう。だから酒やめたり2億なかったりすんのもそんなに変わんないんですよ、同じ。どうせ悩むし。どうせつらいし、と思ってる。
しおひがり
それはそうかもな。結局性質は変えられないからね。そうなんだよね。
たろちん
自分の脳内に苦しめられてるからずっと。喜びも苦しみも自分の脳だからっていうのでいくと、まあその外的要因で、これがあれば良くなるのになっていうのはそんなことないんだろうなって思ってます。
しおひがり
そうかもな。俺も昔から性質には抗うなって言ってるから、散々。配られた手札で勝負するしか。
たろちん
勝負するしかない。やっぱね、心臓に刺さって、そのまま錆び付いて取れないものを無理に引き抜くべきではないと思ってるから。
しおひがり
血が流れるからね。では、そろそろ3曲目、紹介していただきましょうか。
たろちん
はい、クリープハイプで「朝にキス」。
意味のある人生を送るために行う翻訳
しおひがり
「朝にキス」でした。
たろちん
はい。これはですね、クリープハイプは尾崎世界観さんって人が主に曲を書いて歌を歌ってるんですけど、これベースの長谷川カオナシさんが作って歌ってる曲でして。ちょっと交流がありまして、カオナシさん、元々結構ニコニコ動画とか、それこそゲーム実況とか好きで。
しおひがり
あ、そうなんだ。
たろちん
うん。そうらしいんだよ。で、あるときに見てましたみたいな感じで言ってもらって。で、お互い酒が好きだっていう、なんかお酒によって自分を支えてる同志みたいな感じで、ちょっと意気投合して、たまに飲んだりするようになったんだけど。もともと音楽好きなんでクリープハイプとか普通に聴いてて。ファンだった人に見てましたって言われて、俺の方が見てたし、みたいな。
だから何て言うかね。リスペクトを持った状態で、そういう関係になれたっていうのがあったんだけど、入院してる時にのそのカオナシさんとかもうすごい心配してくれて、応援のために曲を作ってくれたりとかして。入院してすぐの時とかにちょっと応援で歌作りましたみたいな感じで音源わざわざ作って、で病室に送ってくれて、寝たきり状態で聴いたりとかしてたんだけど、それぐらい凄いよくしてくれてる人。何か凄い。だから僕はあんまりクリエイターとかっていう人間ではないと思っているんだけど、そういうリスペクトしてくれる人がそういう風にクリエイションで何か自分に向けて作ってくれるみたいなのがすごい嬉しくて、だからこの曲を紹介させてもらったんだけど。漫画家のくらっぺくんが、『はぐちさん』っていう漫画を描いてるんだけど、その子とかも昔から一緒に活動したりするぐらい仲いいんだけど、病室に絵描いて送ってくれたりとか、何かそういう何だろうね。がりくんとかもそれこそ応援のメッセージをくれてたりしたけど。
しおひがり
描いたよ。村上宗隆の絵を。
たろちん
そうそうそう、「なんで?」と思ったけど(笑)。村上宗隆の絵をくれて。病室に飾ってたけどさ。
しおひがり
なんだっけな、明日に向かってフライボール革命や、みたいな絵を。
たろちん
闘病中の僕に向かって描いてくれたと。
しおひがり
描いたね。
たろちん
何かそういうものが一つ一つすごく嬉しくて、なんだろうね。結構生きるか死ぬかみたいなこと言われたときも、そういうのを支えにして生き延びれたし。何て言うかね、すげー感謝をしたんだよね。ありがたいなっていうのをすごいずっと思ってて。何かそういう気持ちになって。で、このクリープハイプの曲で言うと退院してそういうのがあって、帰ってきた時に新曲としてこの曲が出て。
で、それがすごい良くて、当時はまだリハビリ中とかで、あんまり自由には動けないんだけど、こういうの聴いて「ああシャバに帰ってこれたんだな」みたいな。新しいその作品みたいなものが聴けたんだなってのをしみじみ思ったりして、なんだろうね。結局生きるっていうのはなんかそういう、生きてるからそういう新しいものに触れられるみたいな、そういうことを思ったので、3曲選ぼうってなったら、生き残ってからのものを一つ入れたいなと。
しおひがり
ああ、いいね。未来を感じさせる。
たろちん
そういうことです。一応そういう風にポジティブに言っておかないと、何か暗く終わりそうだから(笑)。
しおひがり
確かにね。
たろちん
で、入れました。
しおひがり
なんかさ、入院してる時さ、みんな絵とか描いてたじゃない。で、俺、『100日後に死ぬワニ』のさ、きくちゆうき先生、俺すごい仲いいんだよ。だから、たろちんに何か喜んで欲しいなと思ってさあ。きくちさんと焼肉食いに行ったときに、たろちんっていう奴がいて、死にかけてるから、で、ワニ好きだからつって。100ワニ好きだからちょっと絵描いてあげてくんない?って言ってさ。きくちさんに描いてもらって。で、これきっとたろちん喜んでくれるだろうなと思って今度送ろうって思ってたんだけど、そん時になって俺初めて、『100日後に死ぬワニ』をね、だからその「100日後に死ぬ」っていうのも忘れてて。
たろちん
めちゃくちゃ。
しおひがり
めちゃくちゃ縁起悪って言うのに、送る直前になって気づいて、あ、ヤバいって(笑)。いや、だからちょっときくちさんには申し訳ないんだけど、その時は送らなかった。
たろちん
そう、退院してね。
しおひがり
そう、退院して初めて、もう100日後に死なないっていうのが確定してから渡して。あの時はもう100日後に全然死んでたから。
たろちん
ちょうど100日後ぐらいが一番死にかけてたから。
しおひがり
ありえたから渡すのやめようって思って、ようやく退院してからね。おうち行ってがりがりのジジイに渡したっていう(笑)。
たろちん
良かったね。そういうのもね。本当にありがたかったね。繰り返しになっちゃうけど、やっぱ自分がそういうもの作るとかっていう人ではないから、やっぱこうリスペクトがあって。俺音楽とかお笑い芸人とかそういう人へのリスペクトがすごいあるんだけど、だからこそわりと見てたいというか、会いたいとか仲良くなりたいっていうよりは、上のものとして何か置いておきたいっていう。
しおひがり
あ、そうなんだ。
たろちん
どっちかっていうと。エレカシとか好きだし、宮本とか星野源とか好きだけど、会ってしゃべりたいとかがあんまりなくてむしろ喋ると何かそのいろんな感情が生まれてしまうのは怖いとか。だから結構一つ距離を置いておきたいなって思ってたんだけど、そういう時になっても「えっ、俺に対してそうやって何か投げかけてくれることがあるんだ」っていうのに感動するっていうのかな。なんかありがたいなっていうのがすごく。
だからあんまりそういうのに、自分から行こうともしてなかったんだけど、何かちゃんとありがとうって言おうみたいなとか。退院してから俺、マヂカルラブリーの野田クリスタルが好きなんだけど、東京ゲームショウで何かこう名刺配りますみたいなやってて。
しおひがり
あったね。
たろちん
接触できるチャンスがあったんだけど、昔だったらそういうので、その憧れの人にファンなんです!みたいな。絶対行かない。恥ずかしいし、緊張するし、認知されたくないみたいなのがあるんだけど、いやでももう一回死にかけてるしなみたいな。伝えられる時伝えようみたいな。そういうので一歩踏み出して昔から見てますって言ったの。そうしたら何か向こうもゲーム、ニコニコ動画とか好きな人だったから知っててくれてたみたいで。
しおひがり
あ、そうなんだ。すごい。
たろちん
であとでTwitterでDM送ってくれたり、とかして。そういうのがあったりしたから自分の価値観が1個変わるきっかけにはなったなと。
しおひがり
そうだね。まあデカい出来事だもんね。
たろちん
だからそれはまあポジティブな変化と言えばそうかな、だね。
しおひがり
膵臓を無くして良かったこと、得たことは。
たろちん
絶対膵臓あった方がいいけど。
しおひがり
絶対あったほうがいい。便利よ、膵臓。やっぱ無くした人の話を聞いて言うと、やっぱ膵臓便利だなって思う。
たろちん
コミュ力とかいらないから膵臓あった方がいいと思うけど、あえてなくなって得たものと言ったらそういうこと。
しおひがり
そういうことだね。
たろちん
そういうこと探しだから、膵臓なき人生っていうのは。配られたカードで勝負するしかないから。
しおひがり
配られた後、没収されてんだけどね。
たろちん
没収されて残りの手札で勝負するしかないから、ポジティブな気持ちを得たっていうふうに自分で白紙のカードに書き込んでいくしか無いなって。
しおひがり
何かさ、そのクリエイティブじゃないみたいなことをたろちんは言ってるけどさ。俺は結構クリエイティブな人間だなとは思ってて、たろちんさんはね。
たろちん
ありがとうございます。
しおひがり
そのゲーム実況とかもそうだし、あれも俺は立派なクリエイティブだと思うし。あと文章も書くじゃない、ライター・編集者として。俺たろちんの文章もめちゃくちゃ好きだし、その病気についてまとめたnoteとかもさめっちゃ面白いし。あとさっき言ってたくらっぺ先生とかと組んで何か小説とさ、漫画の同人誌出したりとか。
たろちん
やってましたね。
しおひがり
やってたじゃないですか。そういう結構いろいろやってるけど、今後何かそういう自身のクリエイティブに関してやっていきたいこととかってなんかあります?
たろちん
はい。それ言った方がいいなと思ってたんだけど。仕事を辞めたのとかもそうなんだけど、何から言えばいいかな。僕は自分、文章は一応仕事だし、メインの生業だから文章を書く人だなと自分のこと思ってるんだけど、小説とかそういうクリエイティブ的な文章じゃなくて、俺のやってることって翻訳だなって思ってて。
しおひがり
なるほど。
「お前の文章は読みやすいわ」といってもらうことが嬉しい
たろちん
ねとらぼとかだとニュース記事とかを書くんだけど「こういうことがありました」ってことを伝えるのがニュース記事で、事実を書くことは誰でもできるし、インタビューとかでも何か聞いて言ったことをまとめて書くっていうことなんだけど、そこに「こういう意味だよ」とか意図を汲んで説明したりとか、あと使う表現、ボキャブラリーとかも、なんか難しい言葉は使わないで伝えられる方がえらい……えらいって言うとわかんないけど、そっちをやりたいなと思ってて。だからわりと言ってもらえるのは「あんま文章とか読まんけど、お前の文章はわりと読みやすくて面白いわ」って言ってもらえるのがうれしいというか。
しおひがり
いいね。
たろちん
そういうところの産業を多分担当するのは俺の人生が続く意味かなと思ってて。
しおひがり
ああ、素晴らしい意義だね。
たろちん
せっかく生きているからそれをやろうと思ってフリーになったっていうのがある。意味のある人生にしようと思って。
しおひがり
素敵だね。いや、それはね、何か素晴らしいと思うのは、俺って結構やっぱり俺の書くものって文章とかもそうだけど、やっぱり結構ね、示唆するみたいな表現が好きだから全部を言わないみたいな。音で察してねっていう、これはこのことを言ってるんだなっていうのをこう陰影でうまく伝えられるといいなみたいなものを作るのが好きだから。だからやっぱりそれって結構読み手を選ぶんだよね。だからよく言ってるんだけど、リテラシーが必要で俺のファンってやっぱり明治大学文学部のやつが多いのよ。
たろちん
めっちゃ限定的だ。
しおひがり
そう、だから俺がデザフェスとか出んじゃん。そんで似顔絵とかやってて「いや、しおひがりさんめっちゃファンなんです」って言って来てくれる人に「あのー、職業何されてるんですか?」って聞くと、明治大学文学部通ってますって言って。
たろちん
職業なんだ。
しおひがり
じゃあ次の人って言って、何されてるんですかって言うと、明治大学文学部に通ってて……っていうやつが多くてそう。だからそれはやっぱり選んでんだよね。だからなに言ってんのかわかんねえよっていう人がもちろん大量にいるわけ。その中で何かある程度こう「あ、これ好きだな」って言ってくれる人もいて。それはすごくありがたいんだけど、でもだから俺結構もう断絶してると思ってるんだよね。文章を読める人、読めない人っていうのはいて。普段小説を読まない人に「俺ってこういう村上春樹が好きで、ノルウェイの森お勧めですよ」って言っても絶対に読んでもらえないし、まず読んでも刺さることはない。
たろちん
そうね。
しおひがり
だから小説を読まないっていう人に俺は小説を勧めることは一切ない。たぶんでもたろちんの文章を読んで、「いや、普段文章を読むのあんまり苦手なんだけど、でもあんたの文章は読める」って言ってくれるって、それって何かすごい救いのある意義のある役割だと思うから、それは随時追求していってほしいなって思いましたね。
たろちん
そうね。今は動画とかの時代だからね。文章メディアっていうものが果たしてこれからずっと持続できるのかっていうのはよくわかんないんだけど。俺にはもうこれっきゃねえからよっていう気持ちでやろうと思ってますね。例えば将棋が今、藤井聡太とかが出てきて、結構人気になったけど。それの前の頃、ニコニコで電王戦とかやってたくらいの、コンピューターとプロ棋士、どっちが強いみたいな、あの辺の時代に将棋好きになって。で、すげー将棋の世界って面白くて、例えば棋士一人一人のキャラクターとか、そういうものに対する文化みたいなのが、めちゃくちゃ普通にお笑い的に面白いぐらいにあったりしたのね。ただ、要するに内輪ノリというか村の中での面白さみたいなのが結構あって、何かそういう言語化をしてね、伝える語り部がいないなってのすごい思ったんです、そのとき。
しおひがり
ああ、なるほど。
たろちん
将棋は、「矢倉は将棋の純文学です」みたいな、たとえば言葉とかがあるんだけど、それをさ、将棋ファン同士は「お前の生き方矢倉かよ」みたいな。何も知らない人って「矢倉って何?」ってなっちゃうじゃん。ここが面白いんだよっていうのを何か俺は説明したくなっちゃう性質。だからある意味野暮ったいんだけど、でもちゃんと説明すれば伝わる人もいて、そういうのきっかけでハマってくれることもあるのかなと思って。俺、そういう風に書いてあるものを読んだりして理解するのが好きだから。語り部がいないジャンルで自分が好きなことがあったら、語り部になりたいなっていう。
しおひがり
そのあれで今は格ゲーとかね。ストリートファイターとかね。
たろちん
ああいう村文化というか面白いコンテンツがあって、そういうのを言語化するのって、結構インターネットは担ってた部分があるなって思っていて。
しおひがり
そうだね。
たろちん
で将棋のブログとかを一時期書いてて、そういうのが読まれた時とかにこういうことをやって生きていけたらいいなってぼんやり思ったりね。
しおひがり
ああ、なるほど。
たろちん
将棋ライターになりたいとかじゃないんだけど、いろんなことの「ここが面白いんだ」を翻訳する語り部になれたらちょっといいなとは思っていて。
しおひがり
いいね。
たろちん
それが生業になるほど需要があるかとか色々あるんだけど、何かでもそれをやろうって思ったので、会社員を捨てましたっていう感じですね。
しおひがり
なるほどね。いやぁ、すごく何か意義のある仕事だと思うんで。SKOOTA編集部も必要としてますんで、よかったら。
たろちん
ぜひお仕事いただければ。お仕事とお金をいただければ。お金いただけないと、結局こういうのってさ、続けらんないじゃん。全てのことはそうなんだけど、何か上手い感じになれたらなと思いながら、何かそういうこともやりつつ、金のためのこともやりつつ、バランスを取って生きていこうと思ってます。はい。
迫田
最後に未来に繋がる話としていただいたところで、キュレーションとかって言い方もありますけど、やっぱ物事って一つ事実はそこにあるけど、それをどういうふうに伝えるかの表現の仕方で、その事実をどう解釈するかって変わってくる訳で。今はもうほんとコンテンツが多すぎるので、やっぱり信頼のおける楽しいインタープリター・翻訳者がいることがすごい大事だなと思うし、コンテンツを事実として確認しに行くんじゃなくて、たろちんさんがそう解釈したから、その事実を取りに行くっていう感じのムーブは絶対あるんで、これから。
たろちん
そうですね、そういう風になれたらいいなと思ってますね。僕は何かそれこそ「今俺、膵臓ねぇからよ」っていうのをよく言ってるんすけど、別に膵臓はあるんですよ一応。3分の2が壊死して3分の1しか機能してないってだけで、膵臓を摘出したわけではないんですけど。そこもキャッチーに膵臓がないって言ってるんですけど(笑)。これも多分だから、本当に膵臓のない人とかは不謹慎ってもしかしたら思うかもしれないんですけど。そこはキャッチーさを取る必要もあるっていうのをちょっと思っていて、そういう風に言わないとピンこないことが多分言語ってあると思うんですよね。何かそこで事実をちゃんと伝えすぎると、膵臓がちょっとだけあって……少しあって、少し辛くないラー油みたいな。何かよく分かんないなーみたいな。引っかかりがあると。イメージができないとかもある。そういう意味ではそれこそ言語というよりも何か歌とか、何か音楽とか、そういう右脳的な意味での伝え方をしたいっていう。それを左脳的な言語でやりたいっていうのが、ちょっとイメージとしてはあって。なんで、そういう変な文章を書きたいなと思ってますね。はい。そういう翻訳をしていきたいなと思ってます。
迫田
いや、もう是非一緒に。しおひがりさんも一緒に。
しおひがり
今度何か一緒に、面白くやれたらいいですね。
たろちん
面白いことをやりたいっすね。
迫田
あの日のサークルをここに、現世に召喚しましょう。
たろちん
まあでも本当にでもそういうことをしたいなと思って。
しおひがり
そうね、お茶飲みながらね。
たろちん
そう。茶を飲みながら。
しおひがり
アフタヌーンティーやりながら、何かね、面白いこと考えたいですね。
たろちん
やりましょう、是非。今後ともよろしくお願いします。
しおひがり
よろしくお願いいたします。ではキリのいいところで、この辺で本日のゲストはたろちんさんでした。