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全体の目次


#01

・たろちんとしおひがりの出会い
・酒を飲み交わす青春の日々
・釣りバカ日誌を見る母に学校に行かないことを告げる中2のたろちん
・テキストサイトをやる中で友達を作るために大学にいく
・何者でもない自分を自覚し始める
・有名実況者の腰巾着で繋がりができ始める
・その繋がりの中からライターの誘いを受ける
・悲しい目をして街をさまよい歩く時期に
・いつの時代に聴いても普遍性があるエレファントカシマシ

#02

・ドリキャスからインターネットに入る
・「先行者」を面白おかしくいじった「侍魂」との出会い
・伝説のしおひがりのモンスターファームUSTREAM配信
・居心地の良い村がインターネットにあった時代
・コラボが否定的だった時代もあった
・インターネットをやってるだけでクラスタや人間性を表現できた
・インターネットが自分のものじゃなくなった感
・40代50代でも「たろちん」でお届けしていくしかない
・星野源に教わったこと
・薄めの哲学を塩でいただく時期にて
・しおひがり、たろちんの手が震えてないことに安心する

#03

・生き残ったが人生観、死生観は変わらないことを確認した
・「死にかけたが変わんなかったぞ」ということを言える権利をもらった
・格ゲーをやるようになった
・コロナ禍で逆に安心できたこと
・見ないふりをするのがしんどい
・どうせ悩むしどうせつらい
・意味のある人生を送るために行う翻訳
・「お前の文章は読みやすいわ」と言ってもらうことが嬉しい
・面白いポイントを説明したくなっちゃう
・事実だけではなくて、キャッチーさが必要
・右脳的な意味を、左脳的な言語を用いて伝えたい

ドリキャスからインターネットに入る

迫田

あ、でもちょっと僕聞きたいことがあります。いいですか?

しおひがり

はい、どうぞ。

たろちん

大丈夫です、どうぞ。

迫田

中学2年生の時にテキストサイトって言うと、当時って多分1998年とか1999年とか。

たろちん

そんなものでしょうね。はい。

迫田

Windows 95ぐらいが出て、商業的に何かこうPCのOSは来ましたと。ただネットがまた全然遅いですよみたいな。

たろちん

ダイヤルアップでやってましたよね。

迫田

そうですよね。やっぱそんな時期か、なるほど。だからだいぶ早いなとまず思って。

たろちん

ああ、でもそうか。最初は中学校のパソコン室とかにあるのでやってましたね。

迫田

その環境が中学校にあったっていうのも結構早いですよね、その当時。

たろちん

そうなんですかね。でも、インターネット自体は元々すげえ興味があって、一番最初、家でできた、最初のインターネット通信機器がDREAMCASTだったんですよ。

しおひがり

ああ、ドリキャスね。

たろちん

ドリキャス買った時にドリキャスのゲームが何かしたいっていうよりは、インターネットができる機械が欲しいなと思ってドリキャスを買ったんですね。パソコンはやっぱ高いんで、ドリキャスだったらお年玉でも買えるみたいな感じで。DREAMCASTでインターネット覚えて、ただ家でやると、やっぱ1時間何千円とか金がめっちゃ掛かるんで。学校でやると使い放題の回線があるんで、授業出ないでパソコン室に入らせてもらって、インターネットでそれこそエレファントカシマシとか何か検索してインターネットで色んな情報を見れてすごいなっていうのをやってましたね。

それで言うと、中国のすごい最新ロボットみたいな感じでめっちゃチープな見た目のオモチャみたいな、「先行者」っていうのがあったんですけど。それを面白おかしくいじった「侍魂」っていう伝説のテキストサイトがあるんですけど、それが当時インターネットで結構ミーム的に広まって、それを何かで見たんですよね。で、こんな表現があるんだと思って。

それは何つうか漫画とか面白い本とかともまた違うインターネットだけのテキストの表現っていう独特の空気感があって、これめっちゃ面白いなって思って、やりたいなと思って、そのまんま真似して始めたっていうのが中3とかそんぐらいの時なんですよね。はい。ゲーム実況も同じなんですけど、何か動画を作るとか、いわゆる超クリエイティブなことってやっぱスキルも必要だし、勉強をしなきゃいけないとかあるけど、ホームページビルダーでホームページ作って文章打ち込むだけやったら自分でもできるし、まあゲームやって喋るだけやったらすぐ真似できるしっていうので、これならできるなって。

面白くなる、ならないというより真似がしたかっただけなんですよね、要するに。「真似した~い」っていう、スポーツ選手になれなくても、フットサルやってみたいとかそういうノリ。プロのミュージシャン目指さないけど、ギター弾いてみたいとか、そういうノリでインターネットの遊びをしてたっていう感じですね。

しおひがり

なるほどね。その辺やっぱ俺も結構似たような感じかな。

たろちん

そうね。

しおひがり

そうだね。俺もテキストサイトを見てたし、それでゲーム作ってみたいとかね。そう、インターネットで何か面白をやるっていうのをね、凄い憧れてたんだよね、やっぱ。

たろちん

イラストに出会うまでの色々な。

しおひがり

そうそうそう。その時代はもうほんとそれこそテキストでね、やってみたりとか。俺も、ゲーム実況はしたことないけど、配信でゲームするとかね。USTREAMでやってたりとか、まあだからその時代に出会ったよね。

たろちん

そうだね。その時に、俺はやっぱこれを語り継いでいきたいから言っておくけど、しおひがりのUSTREAM配信で衝撃的だったのがモンスターファームの真似をするって配信があって(笑)。

しおひがり

あれやっぱりいまだに語り継がれてる。

たろちん

あれはもう伝説だから。しおひがりの活動に是非、しおひがりWikipediaに刻んでおいてほしい。ウェブカメラをつけて、その部屋を映して自分が何かあれ何持ってたんだっけ、槍みたいな何か。

しおひがり

そうだね。説明するとまぁ当時、ゲームの配信を俺ずっとやってたんでね。ちょこちょこね。まあ大して見てないけど、数10人とか相手にやってて。そういう感じで時にTwitterで言ってたの。今日はスーパーマリオをやりますとか、そういうのツイートとして。

そういう感じで、今日はモンスターファーム配信をやりますっていう、モンスターファームっていう凄い人気のね、モンスターを育てて戦わせるっていうゲームをやりますっていうのをこう宣言しておいて。で、いざ始まったらWEBカメ映して、俺がゴジラの被り物をかぶって何か槍みたいな、多分親父がアフリカで買ってきたお土産の槍と盾があって、戦士の。それを持って、俺がモンスターになってモンスターファームでトレーニングをして育てて戦って。数年経ったら死ぬじゃん。

たろちん

そうだね。

しおひがり

そのゆりかごから墓場までを俺が全部やるっていう。で、サントラでBGMを流して、最初に助手と出会ってっていうところから、モンスター生まれるところ、戦うところ、飯を食うところ、お誕生日を迎えるところとか。で最後死ぬところまで全部もうエチュードみたいなのやって。

たろちん

「しおひがりは喜んでいるみたい」にして。

しおひがり

常にそのモンスターの状態が、「しおひがりは元気だよ」みたいな感じでテキストで流れるんだけど、それを常に表示しておいて、しおひがりは元気だよっていうのをこう、コラで作ってね。

たろちん

そのコマンド選択画面のモンスターの日常みたいなの、しおひがりさん全部やるから。ただ右から左にうろうろしてるだけじゃなくて、一部始終やってんのが面白かった。こだわってたんだよね。

しおひがり

あれすごいよね。あれはやっぱりいまだにすげえ言われるもん、あのしおひがりのモンスターファーム配信はマジ面白かったっていうのを言ってくれるんだけど、ただあの時の裏番組がシン・エヴァンゲリオン。金曜ロードショーでやってたのよ。

たろちん

何と戦ってんだよ。

しおひがり

いやそう。だからTwitterももうみんな金曜ロードショーの、エヴァの話ばっかりしてて流されてたね笑。ツイートで見かけたのは「裏番組がエヴァじゃなかったら、あのときしおひがりはもっとはねてた」っていう。

たろちん

あれがターニングポイント。

しおひがり

あれがターニングポイントになってたかも。今ごろ人気ストリーマーになってた可能性もあった。

たろちん

いや、下手したらあるからなそういうこと、マジで。

しおひがり

そう。あの時確かにとがってたよね。あの時の俺の何者かになりたい衝動とんでもなかった。

たろちん

うんうん、何かまだインターネットの、何て言うの、可能性みたいな部分がポジティブに捉えられてた部分。

しおひがり

そうだね。だからインターネットが2000年代?ぎりぎり。いや、そんなことないか。2010年ぐらいかとか。

たろちん

そんぐらいだよね。

しおひがり

震災の前後ぐらいだったと思うんだけど。だから、インターネットが今はもう全員に開かれてるものだけど、まだギリギリ閉じられた空間だったよね。

たろちん

そうだね。

インターネットをやってるだけでクラスタや人間性を表現できた

しおひがり

いわゆるアンダーグラウンドな空気が結構まだあった時代だよね。

たろちん

うんうん。面白いことしようぜを本当にやってたし。インターネットの「コンテンツの始まりと終わり」みたいなのでさ、面白い人が面白いことをして、面白くない人が面白くないことをして終わっていくみたいな。

たろちん

結構面白いことをする人が多かったし、見てる人もやっぱアンテナが感度いいというか。村なんだけど、リテラシー高い村ができてた気がする。それが何か居心地良かったところはあるな。

しおひがり

そうだね。面白いよね。だから今さ、何かVtuberとかさ、すごい盛り上がってんじゃん。あれもやっぱり結構箱単位で盛り上がったりするじゃん。

たろちん

そうね。

しおひがり

あとストリーマーとかもそうだけどさ。最近はなんかストグラっていうグランドセフトオートを人気ストリーマーがやったりとか。あとにじさんじとかホロライブとかね、いろんな箱があって、そこの人間模様を楽しむみたいなのが、今もう数万人、数10万人単位でね、やってるけど。それをもっとミニマムにした感じで、ゲーム実況者とかね、USTREAM配信者とかであったよね。

たろちん

いや、変わったよほんとにそのへん。

しおひがり

変わったよね。

たろちん

コラボっていうのがまず否定的な文脈で捉えられてたから、最初って。

しおひがり

あっそうだね。

たろちん

知らねーやつの声とか聞きたくねーよとか。

しおひがり

そうだよ。

たろちん

炎上するっていうものだったから、コラボすると。

しおひがり

そうだよね。

たろちん

コラボって言葉もなかったかもしんないけど、なんか要するに一人の配信者・ストリーマーがいて、そいつと自分を近い存在として見ているのが普通というか「何か知らねえ友達連れてくんなよ、俺の前で」みたいな感じで炎上するみたいなのが。

しおひがり

全然あったよ。

たろちん

こっちが普通でしょっていう価値観だったんでね。

しおひがり

そうだよね。そうそうそう。だから俺も結構ね。だからその狭い村でさ、やっぱ叩かれたりとかあったもんね。俺は結構さ、なんだろう、結構人に会いたがる人でさ。だからたろちんとか会ったのもそうだし。だから何か今度飲みましょうよの感じで。

たろちん

わかるわかる。

しおひがり

うん。でその感じの空気をインターネットに持ち込んでたから。だからそれを毛嫌いする人が結構いたよね、やっぱね。

たろちん

いるいる。今も何かそういう人はもちろんいるんだけど、当時はそっちが明確に悪っていう括り。

しおひがり

そうだね。

たろちん

俺もどっちかというと、別に普通に酒飲んだりすればいいじゃんみたいな。なんか有名人ぶって何か上段にかまえてんだ、みたいなとか思ってたから、何か逆にオフ会とかあったら呼んでくださいみたいな感じでやってたし、今さすがにあんましないけど、今どこそこで飲んでるんで暇な人いたらどうですか?ってツイートしたりとか。

しおひがり

そうか、それで視聴者と飲んだりとかね。

たろちん

そうそう。でなんかそういうのきっかけで仲良くなって今も普通に友達関係続いてる人とか。それこそね、結婚式出るような仲の良い人とかもいるし。

しおひがり

そうだよね。

たろちん

がりくんと毎週飲んでた頃もそういうので。

しおひがり

やっぱ結局そうじゃない?俺もたろちんに初めて会ったのは、何かそんな感じだった気がするよ。誰でも呼んできていいからみたいな。

たろちん

友達の感じで連れてきた人。

しおひがり

そうそうそうそう。

たろちん

USTREAMやってる友達なんだとか言ってきて喋ったりね。

しおひがり

そう。でなんか異常に馬が合ったんだよな。

たろちん

そう、非常に何かうまくいった。

しおひがり

あの時俺なんかをやってる友達がほしくて、俺もなんか大学で軽音楽部みたいな、軽音サークルみたいに入ってて、それはそれでもちろんすごい楽しかったんだけど。でも結構わりとかっちりした型にハマった人みたいな感じであったから、それはそれでもちろんいい人たちだったんだけど、何か作ってる人と友達になりたいなみたいなのが強烈にあって。だからUSTREAMで配信してる人とかと仲良くなって。だからそん時にヒトリエのシノダさんと知り合ったりね。

そこでもうやっぱこの人だなと思って、俺は。付いていくなら。やっぱ俺の面白の根幹を作り上げてくれたのが大井正太郎先生なんで。

たろちん

あの頃ね。「面白研究会」とかね。

しおひがり

「面白研究会」とか言って、ただ飲み会やってた。ひたすらそうだよね、週3ぐらいでやってただよね。

たろちん

やってたやってた。何か思い出した。

しおひがり

何か面白コンテンツを常に作りてぇっていう気持ちで。

たろちん

何かでもやっぱ何者かでなかったからさ、当時って。誰でも。

しおひがり

そうだね、そうだね。

たろちん

何かそういう思いを抱えてる人がいたのかもしれない。あそこから何者かになった人いるし。

しおひがり

そうだね。俺達もね、食えてる訳だからね。

たろちん

一応っていうね。

迫田

しおひがりとたろちんさんが滅茶苦茶飲んでて楽しんでた時期っていうのは、いつ頃の話になるんですか?

しおひがり

多分一番会ってたのは、俺が就職してからだから、俺、2011年卒だから2013年….、2011年から2015年ぐらいの間で確か。

たろちん

そのぐらいだと思います。その頃が一番僕は仕事してなかったですけど。

しおひがり

そう。その時はもう毎週のように金貸して飲んでたんで。俺は安定してたからね。

たろちん

社会人だったから社会人で安定してて、そりゃ金借りるよねみたいな。

しおひがり

自然な流れでね。

たろちん

当たり前、自然なこととして。

しおひがり

ごく自然な流れとして金を貸してたよね。

たろちん

やってた、やってた。いや、楽しかったですね。

迫田

要は部室ノリって、2010年代以降ちょっと消えてきたなとか思って。

しおひがり

あぁそうかもですね。

迫田

うん、ちょっと古いかもしれないですけど、とんねるずがわかりやすいかなとは勝手に思ってて。何かとんねるずって究極の部室ノリの、悪ノリ内輪ノリで、なんかニヤニヤ、でも楽しいみたいな感じのところで。そっからあの人たちって1990年から2000年代が一番ピークだと思うんですけど、そっから2000年代が引き続きああいうノリはあったけど、2010年代以降がそういう部室ノリみたいなものがなくなって。

で、そのなくなった理由はインターネットが開かれたからですけど、確実にスマホの登場じゃないですか。そっからがめちゃくちゃ潮目が変わってきて。で、今や修羅の場になってるじゃないですか、まさにネットが修羅で、大義名分を掲げて何でも糾弾できるようになったと言うか。

たろちん

ですね。いや、本当に生きづらいインターネットですよ。

迫田

そうっすよね。

しおひがり

あったね。随分変わっちまったよな。

たろちん

何か僕これずっと言ってるんですけど、「インターネットなんて陰キャしかやってないんだ」とはそういうことをずっと言ってて。一時期まで確実にそうだったんですよね。

しおひがり

そうだね。

たろちん

がりくんとかとよく飲んでた頃は、もうインターネットやってるとかニコニコ動画見ているとか、これだけでもうある種のクラスタをはっきりと表明できてて。何となく感性近いよねっていうのがわかってたんですけど、今ただなんかYouTube見てるとかTwitterやってますみたいなことだけじゃ、その人間性は全然分からなくなってしまったので、何て言うか、もうそういうクラスターを表現するものではなくなってしまったんですよね。ただの「インターネット」っていう属性が。

だから、インターネットの中でもどういうインターネット観を持ってるのっていうことを掘らないと分からなくなってしまったからマッチングしづらくなったなっていうのはすごいありますね。

しおひがり

そうかもね。

たろちん

いや、陰キャのものだったんですよ、確実に。

しおひがり

かつてはね。

たろちん

うん。だからその部室ノリっていうのもそうで、僕らがやってたのは陰キャが遅れて陽キャのノリやってたというか。

しおひがり

そうそう、陽キャの真似をしてたみたいな、ね。

たろちん

みんなが高校・大学でやめることを、その年代では2軍3軍だったのが皆がいなくなってようやくやってるみたいな。僕は結構自覚的にそれやってたんだけど。

しおひがり

まあね。なんかやっぱりそう、だから当時めちゃくちゃ僕も人に会いまくってたんですよね。だからそん中には勿論、もうインターネットとかから離れて普通に就職して子供いるよみたいな人もいっぱいいるけど、でも本当、今なんか羽ばたいている人もいっぱいいるよね、結構ね。

たろちん

そうだね。

迫田

でも、それってその当時のインターネットの変遷を見てきて、今はたろちんさんがまとめてもらったみたいに、ある程度変遷の中で空気を読めるからこそ、自分のクラスタだけでもうインターネットにいるだけでクラスタ定義されないっていうことの前提も含めながら立ち振る舞えるから、結構今の波を乗りこなせる技量が経験則として付いてきたみたいなところもありそうですよね。

たろちん

どうなんですかね。そんないいもんなのかなっていう感じはありますけどね、やってると。正直だからもうこの5年とか10年とかのインターネット別にもう好きじゃないし、自分のものじゃないなっていう感じがすごいんですよね。

それは年齢的にやっぱ世代交代してるとかもありますしね。なんか、これは本当にもう老害っていうか、みんなそうなるもんなんだなと思うんすけど、昔は良かったねっていう発想にどうしてもなっていってしまって、僕は抗わなきゃなってずっと思ってても、やっぱりそれでもそういう風にどっか思ってしまうんで、もうしょうがないんだなという感じで思ってて。でも、じゃインターネットじゃない何かを今更できるのかといったらもうできないからやってるだけだなと僕は思ってます。

しおひがり

ああ、なるほどね。

たろちん

その他の仕事をやってる方とかでも多分そうかなと思うんすけど、もう20年営業をやっちゃったし、今さら違うことできないよみたいな感じで、そのまま40代50代に入っていく人って結構いるのかなって思ってて。

しおひがり

めちゃくちゃそうだね。

40代50代でも「たろちん」でお届けしていくしかない

たろちん

僕もそれでもうここまで「たろちん」でやっちゃったりし、40代50代もたろちんでやるしかないかなっていう覚悟っていう感じで、今インターネットと向き合ってます。

しおひがり

俺もそうだね、マジでそう。

たろちん

しおひがりで40、50やっていかないと。

しおひがり

いや、もう戻れない。もうチープアーティストやっちゃってんだもん、15年とか。

たろちん

でしょ。もう今からもう一回、じゃあ何か営業か何かやる?って言われてできるかっていう話だよね。

しおひがり

いや無理だね。だからもうマジで食えなくなって会社とか就職するとしてもこの延長じゃないと無理だね、しおひがりとして。

たろちん

そうそうそうそう。そういう道はあるかもしんないけど、結局、しおひがり・たろちんでお届けしていくしかないじゃん、人生を。

しおひがり

マジでそうなんだよね。

たろちん

っていうことなんですよね、だから。なんかそういう割り切りというか諦めというか、そういう気持ちでやってて、何かこう俺はできるようになってきたな、とかっていうすげえポジティブな感じでもなかったりはします。わりとフラットに捉えてて。

しおひがり

そうかもね。ここでもう死んでいくしかねえなっていう。

たろちん

そう、覚悟完了ですよ。

しおひがり

懐かしいな。

たろちん

完了していくしか、せざるを得ない。

しおひがり

いや、もうこの辺で2曲目いきましょうか。

たろちん

曲名いきましょうか。では聴いてください。星野源で「ばらばら」。

しおひがり

これもいい曲って言うか。いや、たろちんを象徴するような曲ね。

たろちん

そうね、これがだからがりくんんとかと飲んでる時のど真ん中の時の。僕が20代後半で星野源がSAKEROCKの終わり頃というか。

しおひがり

解散するかしないかみたいなくらいだったね。

たろちん

星野源って、「あ、SAKEROCKの人って歌、歌うんだ」みたいな感じでなんかそれこそがりくんとかと飲んでる時に最近なんかいい曲ある?みたいな話してた時に、誰かが言いだして。で、俺もハマったっていう歌で。

しおひがり

もう一時期、星野源のことばっかり言ってる時期があったもんね。

たろちん

もう源の話しかしない。俺が源だと思ってた時期があったから(笑)。

しおひがり

そうそう、本当に。20代後半、30手前ぐらいのとこかな。ね、たろちんがね。

たろちん

ゴリゴリに人生観とか思想みたいなのを、星野源に重ねてた時期があって。だから今でこそもうポップスターだけど、このまだ売れてないぐらいの星野源の、何かそういうもやもやも含めた感じが凄い僕は好きで。「ばらばら」っていう歌のすごいいいところは普通、世界は一つになれるよって言いたいところを世界は一つじゃない、ばらばらだけど、そのままどこかに行こうぜっていう、それでいいじゃんっていう、何て言うかそのひねくれた肯定なんですよ。

なんかひねくれて、世界は一つじゃないバカヤローっていう風に作ってるんだけど。フラれた時にやけくそで作った歌って星野源が言ってたんだけど、何かその星野源のそういうひねくれみたいなところにめっちゃシンパシーがあるし、でもそれが悪いことって言うとそうじゃなくて。ばらばらだけど、ばらばらだから重なり合うこともできるし、そういうことでみんなが一見一つになれてるよね、みたいなこと言ってて。「いや、本当はばらばらなんだよ、でもその一つになれている感みたいなのは、それはそれとしてあるから、それでいいじゃん、だからばらばらのまま、そのままやってこうぜ」ということを言ってて、そういう考え方が俺はすごい好きで、今でも俺はそうだと思ってて。

世の中の理不尽とかそういうものと遭遇することが生きてると多いけど、そういう時に「でも世界はばらばらだしな」といつも思って。でもだからそのままやってくしかないんだなっていう風に、その中での最適解を探すみたいなのを俺はこのときの星野源に教わったというか。

しおひがり

ああ、そうだね。たろちんの生き方そのものというか、だから間接的に俺も影響を受けてんだよね。

たろちん

そういう話ずっとしてたもんね、当時。

しおひがり

そうだね。なんかひたすらこういうことを話してたよね。

たろちん

なんか薄い哲学みたいな。

しおひがり

薄い、そう。薄味の哲学をずっとこうなんか。

たろちん

塩味で送ってた、ずっとね。哲学、塩でつまみにしてずっと酒飲んでた。

しおひがり

そうだね。

たろちん

タレじゃなくって塩でいってたよね。

しおひがり

塩で行ってたね。みんなこう胃がやられてたから、濃い哲学はいいんやっていうスタンスです。薄めの哲学でね。

たろちん

うん、そういう感じです。だからすごいこう、なんですか、生き方をすごい象徴した。

しおひがり

うん、そうだね、そう。たろちんの生き方そのものみたいな歌ですね。なんかすげえ覚えてんの、ARABAKIロックフェスに行ったじゃない。

たろちん

うん、行きました。

しおひがり

みんなでね。その面白研究会のみなさんで行った時、星野源がもう売れ始めたぐらいの時だよね。

たろちん

セカンドアルバムが出たくらいで。

しおひがり

もう次から、こんな簡単にフェスで見れないぞ、みたいなぐらい。まだ一番おっきいステージとかじゃなくて全然テントのね、小さめのステージで、たろちんとかと見た時に「いやぁ、よかったね」って、たろちんの顔見たらもうぐしゃぐしゃに号泣してて。

たろちん

当時って結構星野源好きが何か周りにいたから5人くらいいて、みんなグッチャグチャに泣いてて。

しおひがり

全殺しで、全員泣いててびっくりしたのを覚えてる(笑)。

たろちん

セカンドアルバムの「エピソード」の曲とかもむちゃくちゃ好きで。

しおひがり

そうだね。恋ダンスとかの前だよね。

たろちん

前だね、まだまだバナナマンのラジオで誕生日曲とかを歌ってるのが面白いねとか言ってた、その頃ですね。

しおひがり

まあでも、その頃からやっぱ結構酒が加速していくっていう。

たろちん

そうだね。だから毎日酒飲んで毎日星野源聞いてたり、ギターを練習したりしてたね。仕事してないのに。

しおひがり

ギター弾いてたよね。

たろちん

なんか毎日ギター弾いてたときがある。毎日散歩して毎日ギター弾いて毎日焼酎飲むだけっていう。

しおひがり

いや、そうなんだよ、酒の量と比例して、たろちんの手の震えがさ、加速していって。プログレッシブナイフみたいになってたから(笑)。

たろちん

この時期に俺、明確に、ああ、こういう人生ならもう毎日、酒を飲もうって決めたんです。

しおひがり

ああ、なるほどね。

たろちん

それまで日本酒とか度数の高い酒とかを結構飲んだりするのが好きだったんだけど、焼酎の水割りにしようって思ったのは毎日酒飲むからせめて水で割ろって思った。

しおひがり

なるほどね。

たろちん

そっから焼酎水割り人生が10年ぐらい始まる。

しおひがり

始まったわけか、なるほどね。そうだよね。いや、だからあの時は結構心配してたんだよね。やっぱみんなね。たろちんがやっぱもう明らかにアル中だったからさ、間違いなく。

たろちん

まあ、そうだろうね。僕は明確に決めた時期だからね。

しおひがり

そうだねまあ、自分はもうアルコールと共に生きていくってね。

たろちん

そうそう、いやマジで、俺それで死ぬんだって結構はっきり思ってたし、なんならその後にその重症急性膵炎で搬送されてる時に「君、もうこれ酒絶対やめてね」みたいな救急車の中で言われた時、もう「やめるわけないじゃん」って思ってたし。いやだから、それで死ぬって決めたんだからっていう強い意識を持ってた。

しおひがり

なるほどね。でもそれが今やね、紅茶愛好家になって。

たろちん

別に紅茶愛好家になったわけじゃないんだけど。

しおひがり

でも俺は何かね、すげえ安心したのはこないださ、みんなでアフタヌーンティー行ったじゃない。

たろちん

行きましたね。

しおひがり

今まではその「金の蔵」でね、何か安いポテトつまみながらさ、うっすい哲学語ったのがさ。最近はさ、お洒落なカレー屋に行ったりとかさ。カフェでさお茶を飲んだりとかさ。

こないだ何かいいホテルのアフタヌーンティーとか行ってね、ふかふかのソファ沈んでさ、二人で。横を見たらさ、たろちんの手がさ、一切震えてなくて。これは何かまあすごい安心した。やっぱ。俺、結構インターネット恩人がどんどん死んでいってんだよね。

たろちん

まあねえ。がりくんのラジオでも言ってたけど、このへんの界隈のがりくん周りの人とかってさ。インターネットやってる人の中でもわりとディープ側というかさ。闇寄りのインターネットに属する人が多いと言うか。

しおひがり

そうなんだよね。そうそうそうそう。

たろちん

魂でインターネットやってるよね。

しおひがり

いやそう、魂でタイピングしてる人たちだからさ、削れてるんだよね。やっぱその魂の先っちょは。

たろちん

俺たちの世代……っていうと、ちょっと主語デカすぎだけど、そういう濃いインターネットやってる人達がやっぱ固まってたよね、あの時代。

しおひがり

そうだね、あの時代は。特にやっぱ俺がそういう人たちを面白がってたというか、そういう人は好きだったから。

たろちん

俺もそう。

しおひがり

何かしら欠けてる人たちだったし、俺はそういう人たちの面倒を見るのが好きだったから、いまだにそうかもしんないけど。

たろちん

金貸してもらったり。

しおひがり

そうそうそうそう、金貸したりとかでなんかそのちょうど俺の形に穴が空いてたりするんだよ。俺が埋められる、俺が得意としてるところ。だからそこである種共依存じゃないけどさ、なんかお互いにこう居心地が良くてみたいな人達がいたから。

だから俺が何かバットマンとロビンみたいな関係で(笑)。サイドキックやってるみたいなのが結構あったんだけど、やっぱりそういう人たちって当時のたろちんとかもそうだけど、やっぱ酒をさ、異常にやったりとかさ。煙草もガンガンやるみたいな。だから、もう未来を結構ベットして今を生きていく人たちで。俺は結構逆だからさ。今を犠牲にしてでも未来っていう主観で思考だから、その今を生きる人たちがもうどんどん死神に肩叩かれてて。

たろちん

結構羽交い締めにされたもん俺。

しおひがり

そうだよ、よくあそこから抜けたよ。あそこから入れる保険あると思わなかったよ。

たろちん

いやほんとよ。そういう生き方が正しいと思ってたし、何なら俺は今でも正しいとは思ってるから。俺は一個も間違ったことしてないと思ってるし。何て言うのかな、後悔は全くない、かな。そういうね、やっぱ命を鉛筆削りでゴリゴリ削りながら生きるしかないっていうことがやっぱあってさ、そういう人がいるんだよね、やっぱね。

だからさ欠落っていうことを言ったけど、そういう欠けている人に惹かれるってのは多分そういうことで、自分もそういうところがあるから、星野源のばらばらとかに惹かれんのも多分そういう部分だと思うし。

しおひがり

そうだね。

たろちん

そうそう。

#03に続く