この記事はポッドキャスト番組として以下のメディアで聴くことができます。

全体の目次


#01

・アニメーターからスタートした山本さんだったが…
・Twitterで繋がった山本さんと下田さん
・子供の頃の夢が詰まったガラクタ町
・ファンタジー作品を摂取してきた
・サマーウォーズを見て目指したアニメ業界
・バイトをしながら絵を描いていた下田さん
・アニメ業界に属さずにアニメを作るということ
・アニメーションの尺についての衝突

#02

・自主制作アニメを作ろうと思った経緯
・井の頭公園での二人のスケッチ会
・アニメ業界でアニメを作ってみて感じたこと
・ハイリスクローリターン
・下田スケッチがあることでバランスが取れた

#03

・アソビヅクリの二人にとっての遊びとは?
・熱中できること
・構造理解ができること
・スケッチを通じて対象物の身体性を獲得する
・遊びができる場を作るということ
・アソビヅクリが考える物語について

Twitterで繋がった山本さんと下田さん

迫田

アソビヅクリさんはお2人のクリエイティブユニットでして、今日はお2人にお話聞いていくんですが、先にこのアソビヅクリというアニメチームユニットのプロフィール説明をさせていただければと思います。2018年に東京で「遊びを作る遊びの延長」をテーマに、企画マーケターの山本さんと作家の下田さんで設立されたアニメチーム。斬新なアイディアと緻密な技術力を併せ持ちながら、遊び心と深い思考が感じられるクリエイティブが特徴、というチームになりまして、今日は山本晃弘さんと下田健太郎さんに来ていただいております。改めてよろしくお願いします。

山本・下田

よろしくお願いします。

迫田

ということで、このラジオはゲストの人生の旅に迫るということなので、現在地点から少し遡って、お二人が過去からどのような形で今に至っているのかということをお聞きしていきたいです。お2人いらっしゃるので、一人ずつお聞きしていきつつ、多分二人が人生の中で交わってくるポイントがあると思うので、その交わってくるポイントからじっくり話を聞いていければと思うんですが。先に山本さんのプロフィールから山本さんの人生の旅に迫っていければと思うんですけども、よろしいでしょうか?

山本

はい、よろしくお願いします。

迫田

山本さんなんですが、アソビヅクリでは企画マーケターというポジションを名乗られておりまして。で、プロフィールとしては高校卒業後アニメーターとしてアニメ会社に入社ということで、アソビヅクリでは企画マーケターなんですが、もともとというか、最初アニメーターをやられてたということなんですね。

山本

あ、一応そうですね。

迫田

なるほどですね。そこで今に至るまでにストーリーがあると思うんですが、またそこは後で細かくお聞きするということで。で、その後、「技術不足で約一年でクビになる」というところでを包み隠さずそのままストレートに情報を頂いてまして、その後ツイッターで下田さんと出会って、一緒に自主制作アニメを作ることになるが、一作目は企画倒れするということですね。

山本さんの人生の旅において言うと、アニメ会社に入社した後にもう結構早いタイミングで下田さんと出会って、自主制作の道に漕ぎ出したっていうことなんですね。この時っていうのはどんな流れだったんですか?

山本

えっと、どうだろう? 1月にクビになって……正確には12月末か。で、下田と1月に初めて会って、その後下田が忙しいということでしばらく会わなくて、また5月ぐらいになって久しぶりに会って、そこで「自主アニメ作ろう」みたいになったっていう感じなんですけど。

迫田

山本さんの中でアニメや映像という表現は、アニメ会社出た後もやり続けたいなと思うところがあったという中で、やっぱ会社に属して何かやるよりも、自分たちでやりたいっていうことがなんか下田さんとの話の中で盛り上がったから自主制作アニメのチーム作ろうっていう形になったんですかね?

山本

いや、まあ、もしかしたら本音としてはそういうのもあったかもしれないですけど、当時はもう技術不足を素直に痛感してクビになって、ただただ人生路頭に迷っていた時期で。どう生きるかわかんないなって思いながら、そうですね、憧れのクリエイターだった当時の下田に声をかけて、なんか人生相談に乗っていただけないか、みたいな感じで。アニメ続けるかどうかも考えてなく、ただただ話しに行ったって感じですね。

迫田

なるほど。その当時は一方的に下田さんを山本さんは観測していて。下田さんは山本さんの好きなクリエイティブをツイッターとかで発表されてたんですかね?

山本

そうです、そうです。で、クビになるちょっと前あたりに下田からフォローが返ってきたので「あ、これは声かけてもいいか」って思って声かけに行きましたね。

迫田

あっ、そこから始まってるんですね。2023年の現在のタイミングでは、アソビヅクリとしてツイッターも含めて様々な活動をやられていて、順風満帆のように見えるんですけど、最初のキャリアのスタート時点ではちょっとした挫折をして、その挫折から立ち直るタイミングで新たな出会いがあり、今に至っているっていうことが分かったので意外だったなっていうのを思いました。

ここで下田さんの方に話をスイッチできればと思うんですけど、そういった形で山本さんから発見されて関係が始まった下田さんですが、いただいているプロフィールですと、定時制高校卒業後、山崎パン工場でバイトしつつ、ふらふらしている時期にツイッターで山本さんと知り合う、というふうにいただいていて、これって時系列としてはさっき山本さんが言われていたタイミングはバイトしながら、ツイッターで色々描かれてたっていう感じなんですか?

下田

そうですね。高校卒業した後、バイトをしばらく続けていて、高校入った頃からツイッターはやっていて、多分そのどこかで晃弘が認知してくれていたのかな。で、バイトをやっている頃に急にD Mが来て「会いませんか?」みたいな。それで「ああ、いいですよ」って、会いに行ったって感じですね。

迫田

会うに至るきっかけって、どんなところがきっかけだったんですか?というのも、やっぱ仲間探しているクリエイーターって多いと思うんですが、なかなか声をかけれないじゃないですか、あと、声かけられる方も、上手く返せないじゃないですか、声をかけられたとしても。だから2人がどういう風なコミュニケーションをして、どういったファーストインプレッションだったからこう柔らかな関係性になったのかなみたいなものはちょっと聞きたいなと思いまして。

下田

もしかしたら参考にならないかもしれないんですけど、「会えませんか」みたいにいきなりきて、で、なんか特に僕も何も考えず、「ああいいですよ」みたいな。多少会話はしたと思うんですけど、なんかやばい人じゃなさそうだなっていうことで、もうそのままなんか会ったていう感じなんです。

迫田

そのとき山本さんはどう考えてコンタクト取った感じなんですか?結構ノリな感じだったんですか?

山本

考えてというか、人生路頭に迷って、なんかどの一手を打てばいいかもわからないみたいな状態で、唯一ちょっと興味があったのが下田にコンタクト取るっていうことだったので、なんだろう、まあウキウキでもないが、とりあえずコンタクト取ったって感じです、それくらいしか面白そうな選択がなかったので。

迫田

でもそれを聞くと下田さん的には「ありがたい」っていうか、嬉しいとこ結構ありますよね。

下田

なんか僕でいいんかなみたいな感じはありますね。

迫田

山本さんはその時、下田さんのどういったクリエイティブを見て「いいな」って思ったんですか?

山本

えっと、まあ下田がまさに僕が描きたいような絵をいっぱい描いていて。で、まあさらに年齢も近いっていうところであって、これが本物の天才かぁ、みたいなものは当時感じて、まあ自分じゃないんだなみたいな。なんかこう絵描きとして成功していくのは自分じゃなくて、こういうやつかって思いながら……え、どんな質問でしたっけ?(笑)

迫田

その当時見たクリエイティブでピンときたものというか。

山本

そうですね。そう、まあそこら辺で、ピンときました。

迫田

アソビヅクリとして作ろうとされている『ガラクタ町』って、僕も結構好きなコンセプトで、でも僕だけじゃなくて、多分なんかこのなんだろうな、人生を生きている人間は、一度はこのようなの世界観とか物語をなんか夢想したことがあるんじゃないかなって。まさにその子供の頃の夢っていう感じで。その言葉がまさに示すような絵になっているなと、今のアソビヅクリさんが出されているクリエイティブを見て思うんですけど。であった当時、下田さんが描かれていたのもなんか近しいことだったんですか?

山本

あ、そうですね。ファンタジー系のイラストだったんですけど。あとは、なんだろな、ジブリであったりとか、そういったビジュアルが好きだったんですけど。下田の作る世界観とかもまさにそういった国民的な世界観で..。そんな感じでした。

迫田

下田さんはお聞きしたいのですが、その話を聞きつつ自分で分析するのは難しいかもしれないんですけど、我々日本国民が「なんか国民的だ」と感じる記号ってあるじゃないですか。まさにジブリが作っている記号ってあると思うんですけど、どういったニュアンスやどういったアクセントが自分のクリエイティブにそういった国民的な記号性を帯びさせてるって思いますか?

下田

記号性…。なんだろう。でもまあ僕も結構ジブリ作品好きなので、多分自分で見つけてきたってよりか、そういう作品から知っていたりとか、好きな作品をとにかく無意識にたくさん見て、なんかチャージする感覚があって、そういうので蓄積されていったものがなんか描いた絵に出てくるみたいな感じがありますね。

迫田

そもそもインプットやチャージは相当してきた感じなんですか?

下田

そんなに数は多分してないかもしれないんですけど、まあ、ジブリ作品だったりとか、海外のファンタジー作品っていうか、ああいう感じもすごい好きで高校の卒業したあたりとか、卒業する前あたりとかからD V D借りて見て模写したりとかもしていて。なんか割とアニメっていうよりは、割とそういうファンタジー映画とかからの蓄積が多いかもしれないです。

迫田

例えば今思い浮かぶエッセンスを摂取したなっていう海外のファンタジー作品って何があったりするんですか?

下田

パッと今出てくるやつだと『ヒューゴの不思議な発明』だったかな。ちょっとタイトルがあやふやなんですけど。なんか割と見てるけど、すぐ出てこないですね。ファンタジー作品って割と見てるんですけど。

迫田

なるほど。今、wikipediaでカンニングをしてるんですけど、マーティン・スコセッシ監督の初の3D映画なんですね。

下田

はい、あ、3Dだったかなあ。実写で結構たくさんCG使われてたやつなのかな?

迫田

もしかすると、劇場で見るときには3Dメガネとかで見ることができたのかもしれない。

原田

うん、確かそんな触れ込みだったような。

下田

ああ。えーそうなんだ。

原田

だからそれを意識した奥行きの絵づくりが結構あったような。

下田

確かに、初耳です。当時、リアルタイムで見てたってよりかはDVDで見ていて、高校の頃で18、9歳とかそこら辺です。

迫田

そっかそっか、まあでもアニメはジブリは中心だが、海外の作品でも実写アニメ問わずファンタジー系とかアドベンチャーファンタジーとかそんな感じのジャンル感はすごい好きで、いっぱい見られてたっていうことですね。

下田

はい、そうですね、はい。

迫田

なるほど。摂取されたものが下田さんのフィルターを通じて、フィルムに投影された時に、やっぱちょっとどこか不思議で今の世界の延長線上にありそうだけど、ちょっと違う世界の話だったりひと夏の冒険のようにちょっとした遊び心があるっていうところに心に子供を抱える大人はワクワクするんだろうなっていうのがあって。

下田

確かに。

迫田

お2人の出会いが、山本さんが観測していた下田さんのクリエイティブを見て声かけられたところから、意気投合してっていうところであったということがわかってきたんですが、一旦ここでエピソードワンの前半を終了させていただきたいので、後半に向かうために一曲紹介をしていただければと思うんですけども。

山本

わかりました。映画『サマーウォーズ』より「The Summer Wars」お願いします。

アニメ業界に属さずにアニメを作るということ

迫田

お聞きいただいたのは、映画『サマーウォーズ』より「The Summer Wars」でございました。まさにこの曲は日本の夏を感じる曲になっていると思うんですけども、この曲紹介いただいたんですが、お二人はこの曲で何かエピソードがあったりするんでしょうか?

山本

僕が中学二年生ぐらいのときに金曜ロードショーで『サマーウォーズ』を見てアニメ業界を志したっていうのがありまして。そういった思い出の曲なので、今回使わせていただいたっていう感じですね。

迫田

でも、まあ、これ聴くたびに毎回そのときの気持ちがフラッシュバックするわけですよね。そういう曲って大事ですよね。やっぱり今も作る中で、新しいもの作る中で時折聴いたりするんですか?

山本

そうですね、たまに聴きます。

迫田

下田さん的には何か『サマーウォーズ』に関しては、これも摂取されてたものの一つにはなるかと思うんですけど、なんか思いとかあったりしますか?

下田

初めて見た時期とかは正直覚えてないんですけど、でも晃弘とアニメを作っていく中で、改めて脚本の本とか買って勉強してっていう時に、この『サマーウォーズ』見て、めちゃくちゃ面白いなっていうのは改めて実感した作品ではありますね。

迫田

脚本観点なんですか?

下田

まあ、そこまで脚本観点で見れてたかっていうのわからないんですけど、単純になんか、普通にいろんな作品と並べても面白いなって。何回見ても面白いなって感じていますね。

迫田

そうですよね。細田守さんは作品制作を重ねていく中で、徐々に自身で脚本もチャレンジされるタイミングがどんどん増えてきたと思うんですけど、この時って脚本は奥寺さんがやられてて、結構奥寺脚本のファンの方もいらっしゃるなっていう印象があったので、脚本って話が出てきたのであとちょっと面白いなと思ったんですけども。

下田さんに聞ききたかったのが、下田さんのプロフィールを紹介させていただいたときに思ったんですが、アニメをやりたいなと思っている人がアニメ会社の門をはなっから叩かないパターンって珍しいのでそのあたりお聞きしたいなと。僕、京都にいるので、 結構周りに芸術系の専門学校の学生さんだったり、大学の学生さんがいらっしゃるんですけど、皆さんまずは学業の門を叩くっていうこともあるかなと思うんですね。という中で下田さんはアニメ会社のストレートインしなかったのとかの理由ってあるんですか?またその時ってどういう思いでバイトしたり、ツイッターで発信されたりしてたんですか?

下田

あー、そうですね。当時は、なんだろう、何しようかなみたいな感じでグラグラしてて、多摩美かなんか芸祭みたいなもので、友人が店を出すっていうことで、そこで自分もなんかポストカードを置いてもらえるみたいな話になって、そういうポストカード用の絵を描いたりとか、そういうことをなんかフラフラッとちょっとだけやってただけで、でアニメーターとかになろうっていう意識とかはなくて。それで、一応あのムサビを受けたんですね。ただ、予備校とか行ってなかったり、たくさんデッサン描いてるとか油絵やったりとかっていうのをやってなかったんで、落ちちゃったんです。そういうのもあって何しようかな、みたいな感じでふらふらしていてっていう感じで、アニメーターとして就職しようとかそういうのは全然考えてはいなかったですね。

迫田

広域な範囲で、何か物を作るっていうところには漠然とベクトルは向いていた、というのはあったんですか?

下田

そうですね。はい、なんか絵描けたらいいなとか、そんな感じですね。

迫田

でもやっぱ差になって蓄積されていくなと思うのが、やっぱり漠然と思うだけの人もいれば、実際に絵を描いてそれを発信し続けるっていう人もいるところで。これってまさに山本さんが下田さんを発見したのは、下田さんが発信されていないと発見していないわけですよね。だからすごく大きな差になるなと思うんですよね。その時の発信のモチベーションってどうだったんですか?

下田

当時はまあ反応もらえるっていうのは楽しかったので出していったりとか、あと単純にやっぱ描くのが楽しかったので描いたついでに反応もらえたら嬉しいなっていうんで出してたりとかはしてましたね。

迫田

そのアクションがいま一緒にやる仲間につながるとかは、その当時は全然想像なかったでしょうし。

下田

まったく思わなかったですね、まったく。

迫田

なるほど、なるほど。お2人の話に戻していくと、山本さんが下田さんに話を持ちかけて話ししたタイミングから一緒に自主制作アニメを作ろうっていう風になったということなんですが、山本さんのプロフィールの中で紹介されていたんですけど、一作目が企画倒れするっていうこと書かれいるんですが、今の現段階をちょっとだけ整理すると、今作られている作品のタイトルは、これは『ガラクタ町』でいいんですか?まずは。

山本

そうです。まだ仮決定とかですけれど、『ガラクタ町』で大丈夫です。

迫田

じゃあ『ガラクタ町』はナンバリングで言うと、アソビヅクリさんの中では何作目になるんですか?

山本

何作目って言われると結構難しいんですけど、まあ、わかりやすく力入ってる作品という意味では二作目とかなのか。二作目が三作目かぐらいの感じですね。

迫田

ちなみに一作目はなんかどういう作品だったんですか?

山本

一作目は『二人の秘密基地』っていう作品で、これも子供たちのジュブナイルっぽい作品なんですけど、子供たちが秘密基地で遊ぶっていうショートアニメを作ろうとしてましたね。

迫田

その作品は今に繋がるし、根本的なテーマはアソビヅクリさんの中でずっと通底してる感じですよね。

山本

確かに。

迫田

一作目に関しては作品を作っていこうっていって、着想やコンセプトが出てきて、それを具体化していくタイミングで「なんかこれじゃなくて別のがいいな」ったってことなんですかね?

山本

企画倒れしたのはアニメーションの尺について下田と揉めて。僕としては一作目は短くして出したいっていう感じで、でも下田としては短編映画っていうか40分とかそういったものをやりたいっていうのがあって揉めて、最終的に下田が「尺短くしろって言うんだったら、俺はひとりでやる」って言うんで、じゃあまあ見守るしかないってことで見守っていたら、しばらくして下田が「やっぱり無理だ」っていうことで、企画そのものをちょっと考えようかみたいなって、っていう感じでした。

迫田

なるほど、なるほど。今いただいたエピソードの中で聞いてみたいことがいくつかあったのでピックアップしていくと、その当時思っていたお互いの乖離点が尺という形で一つ表出したと思うんですよね。何かを作るときに尺っていうのは、その表現物を表す重要なファクターじゃないですか。作品性もそうだし、実現性とかも含めて、尺って結構一つ大きい話なので、今後のアソビヅクリさんが作られていきたいものがどういった尺感で展開されるのかっていうのは、かなり作品に関与してくると思うのでこの後のエピソードで細かくお聞きできれば嬉しいなと思ったのが一つと、テーマに出た「遊び」っていうところにも少しずつ踏み込んでいければと思いました。

#02へ続く