こんにちは、モブです。 SKOOTAGAMESのネゴラブチームでUnity初心者として開発を担当しています。普段は適当にゲーム作って帰るだけの人間ですが、 今回は珍しく東京ゲームダンジョン6のレポートを担当することになりました。
記事執筆は本来担当ではないはずですが、気がついたら私に回ってきていたので… まあ、せっかくの機会だということもあり、書かせていただきます。
本日は私の目線で見つけたインディーゲームの「らしさ」についてお話しさせていただければと思います。
スマホ一台で気軽に遊べる組織診断:悪の組織の適職診断
まず紹介するのは「悪の組織の適職診断」です。毎日残業に追われる悪の組織のような会社にいる身としてこのタイトルには思わず惹かれてしまいました。キャラクターが全員猫というところも印象的。可愛らしさと悪の組織という意外性が新鮮な組み合わせだなと思いました。
プレイ自体は3分程度の性格診断系のミニゲームです。Webで公開された無料ゲームということもあり、ボリュームはそこまで多くありません。この場合に限っては、それがこのゲームの「らしさ」ではないかと。
特に目を惹いていたのは展示の方です。QRコードとNFCカードを活用し、来場者が自分のスマホで気軽に遊べる仕組みを整えていました。 Unity初心者の私としても、参考にしたい要素でしたね。
結果画面のスクリーンショット機能やSNSシェア機能など細かな配慮も随所に見受けられました。 インディーゲームならではの「小さいけど丁寧」な作り込みが、確かな完成度につながったと今更思いました。短いプレイ時間の中にも、プレイヤーを楽しませる工夫が散りばめられており、これはこれですごく楽しいゲーム体験をなしていると思わざるを得ませんでした。
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縛りプレイに意外な攻略法が:つなげてすてーしょん
続いて紹介するのは「つなげてすてーしょん」です。一見シンプルな見た目ですが、実際に遊んでみるとなかなかの手応えでした。
ゲームの仕組みはこんな感じです。マップ上の電車をゴールまで導くのですが、与えられた直線レールと曲線レールを全て配置しないと電車が動かない仕組みになっています。 強制的にレールを置かせる発想が面白いですね。
ただ、難易度は予想以上に高めでした。特に、スイッチを通過するとレールが90度回転するギミックタイルの存在で、かなり頭を悩まされました。 ですが、このゲームで一番印象的だったのは最終のステージにあった、ある「発見」です。10分ほど詰まっていたところ、開発者から「実は全レールを通る必要はない」というまさかのアドバイスをいただきました。
パズルゲームとしては致命的かもしれない仕様ですが、インディーゲームならではの遊び心としてむしろ好印象。絶対パズルが難しすぎて言ってるわけではありません。完璧な作り込みよりも、こういった予期せぬ攻略方法が許される自由な空気感。それがインディーゲームのいいところなのかもしれませんね。
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クリッカーで説く仏の道:仏陀摩真
三つ目に紹介するのは「仏陀摩真」です。 シンプルなクリッカーゲームに見えますが、仏教の教えがしっかり組み込まれた意欲作でした。
基本システムも予想の通りです。 仏像をタッチしてポイントを貯め、そのポイントでステータスを上げていく… ここまでは普通のクリッカーゲームではないかと。
でも面白いところは、別に仏像じゃなくてもこのゲームを遊べるというところ。すなわち自分の「推し」、例えば飼い猫の写真でもこのゲームはプレイOKなんです。 「執着」を「功徳」に変えるとは、なかなか教理の深さを感じますね。
これがいわゆる「極楽浄土」なのでは。
それと意外だったのが、ランキング機能が実装されていないということ。 他者との比較ではなく、自分との戦いこそが大切だという仏教の考えからきているそうです。
他にもブースで制作者の方から色々と説明をしていただくことも。 その中で一番中央にいらっしゃった、ある製作者の坊主頭の理由が未だにも忘れられないですよね。
「エンタメに髪の毛は果たして必要なのでしょうか」
この答えには、正直グッときました。(もちろん、私は坊主にならないつもりですが)
ただのクリッカーゲームに仏教テイストを乗せただけなら軽いネタゲーで終わっていたかもしれません。 でも開発者の真摯な姿勢のおかげで見事に形になったわけです。インディーゲームならではの突き抜けた思想を形にする、そんな可能性を感じられた作品でした。
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教育と地獄が織りなすアイロニ:子どもたちの庭
四つ目は「子どもたちの庭」です。 このゲームには本当にショックを受けました。
一見するとブロックを積み上げる単純なパズルですが、実は「賽の河原」という日本の伝承をモチーフにしています。親より先に逝った子供たちが石を積み上げる中で、突然現れた鬼がそれを崩し続ける…そういう残酷な世界観を用いているわけです。
そこに教育玩具「フレーベルの恩物」を組み合わせ、2000年代の教育ソフトのようなUIで表現する…という大胆な発想は正直「ヤバい」と思いました。 教育的要素と地獄という世界観の組み合わせがなんとも言えない深い闇を感じさせます。
システム自体は確かにシンプルです。 ブロックを積み上げるだけなのですが、その世界観とシステムが絶妙にマッチしてただのパズルゲーム以上の体験になっています。試遊は全4ステージ構成で、それぞれプレイ時間は短めですがその分、マルチEDになっているなど密度の高い内容に仕上がっていました。
音響面も相当こだわっていて、若干不快にも感じる効果音やあるインディーバンドが手掛けた独特な楽曲まで、世界観の完成度を高めています。
あえて「惜しいところ」を探すのが難しいくらい作り込まれた作品でした。 むしろインディーゲームでここまで突き詰められるのかと驚かされた、発売が楽しみの期待作でした。
香り立つノスタルジー:東京珈琲パンデチカ
五つ目は「東京珈琲パンデチカ」です。このゲームの展示で印象に残ったのは、何より漂ってくるコーヒーの香りでした。
ゲーム内容はこんな感じです。 目の前にいるお客さんのためにコーヒーを淹れて、そのテンポと完成度で点数が変わる… 普通のカフェゲームに見えますが、このゲームのポイントは舞台が「コロナ禍」であること。それも「懐かしく思い出す」という切り口で描かれているのが新鮮でした。 「もうそんな時代なんですか?」と開発者に聞いてみたところ「そろそろその時期なんじゃないかな」という回答返って来てのでなるほど、と思いました。
展示の方法もなかなか良かったです。実物のコーヒーミルを模したコントローラーでゲーム内と同じように豆を挽いていくのですが、これが思いのほか効果的でした。
ブースに漂うコーヒーの香り、過去を懐かしむノスタルジックなテーマ、そして実際の体験を組み合わせた展示… 今でもブースのことを思い出すとうっすらとコーヒーの香りがするほど、その展示の仕方は「賢い」としか言えません。
インディーゲームって、 こういう「体験」まで含めた表現ができるものなんですね。
もはや筋トレじゃない:全トレ
最後に紹介するのは「全トレ」です。 全部トレーニング、略して筋肉と頭脳の同時トレーニングを目指すゲームです。展示ブースが妙に賑わっていたので近づいてみると、モニターの前で必死にスクワットをする人とそれを興味深そうに見ている人々がいっぱい… これは気になって見てしまいますね。
仕組みはこんな感じでした。 モニターについたウェブカメラで顔の上下運動を検知し、それに合わせて画面上のブロックが消える。 ブロックの奥には程よい難易度のクイズが隠されていて、プレイヤーは答えを見つけるためひたすらスクワットを繰り返す…という。
開発者によると100問ほど問題を用意してあるそうで、かなりの気合いの入れように驚きました。
実は筋トレ系のゲームってイベントでよく見かけるのであまり期待はしていなかったのですが、このゲームには普段のネタげーとは違うある特徴がありました。
なんと、スマートフォンで自分の顔を撮影して、それを上下に振るだけでクリアする人を許していると… 本来の筋トレとはかけ離れていますが開発者はそれも「アリ」としているみたいです。
「とにかく楽しく遊べればOK」というこの自由な発想こそ、インディーゲームの醍醐味なわけですね。
持っているカメラが壊れるかもしれないので実際にプレイはしていないのですが、プレイしている人たちの楽しそうな様子を見ているとなんだか私まで楽しくなってきました。
最後にゲームダンジョン6を振り返りながら…
以上、六つのゲームを紹介してきましたが、改めてインディーゲームの面白さを実感した気がします。
完璧な作り込みを目指すわけでもなく、かといって手を抜いているわけでもない。その「ちょうどいい」バランス感覚が、インディーゲームの持ち味なのかもしれないと、改めて考える機会になりました。
猫の適職診断に始まり、駅のパズル、仏教の教え、子供たちの地獄、コロナ禍のカフェ、果ては筋トレまで… テーマはそれぞれバラバラなのに、どれも開発者の「やりたいこと」がはっきりと伝わってくることが不思議だなと思いました。
適当にゲーム作って帰るだけの私にはまだまだな気がしますが、いつか弊社のゲームでもそういう「ちょうど良さ」を、誰かに感じさせてほしいですね。
それに関しては今後の楽しみにしておきつつ、私はそろそろ定時なので本日のレポートは以上とさせていただきます。 では。