恐怖と安らぎが同居する奇妙な空間 ― ホラーゲームオンリー展示会「DREAMSCAPE #4」レポート

こんにちは、SKOOTAGAMESのネゴラブチームに所属しております、モブです。 前回、大阪ゲームダンジョンのレポートで新年のご挨拶をさせていただきましたが、実際に私が2026年に入って初めて参加したイベントは、こちらの「DREAMSCAPE #4」となりました。開催日はこの前となります、1月18日の日曜日。場所はオタク文化の聖地、秋葉原にあるUDXギャラリーです。 今回のテーマは、なんと「ホラーゲームオンリー」。 正直に申し上げますと、私はホラーゲームの実況を見るのは好きですが、自分でプレイするのは少し(いや、かなり)苦手なタイプです。特に、突然画面に何かが飛び出してくる「ジャンプスケア」系の演出には、泣いてしまう自信があるほど弱いです。 会場に足を踏み入れると、そこは以前のDREAMSCAPE#3とは打って変わって、黒と赤を基調としたダークな色彩に包まれていました。照明も落とされ、どこか不穏な空気が漂っています。…と書くと恐ろしげですが、実際には多くの来場者で賑わっており、陰惨というよりは「お化け屋敷の列に並んでいる時」のような、心地よい緊張感とワクワク感が混ざり合った空間でした。 DREAMSCAPEの特徴である「座れる場所が多い」という配慮は今回も健在で、プレイに疲れたら少し離れて様子を眺めたり、空き席を待ったりと、自分のペースで過ごせるのが印象的でした。もし、「ゲームイベントに行ってみたいけれど、雰囲気が分からなくて怖い」という方がいれば、私は迷わずこのイベントをお勧めするでしょう。(展示されているゲームは怖いですが、場所自体はとても優しいですから。) さて、そんな奇妙な安らぎと悲鳴が交差する会場で、私が冷や汗をかきながら体験したいくつかの作品をご紹介します。 Don’t drop the Cake:視線のジレンマと、ケーキを守る“罰ゲーム”のような快感 まず最初にご紹介するのは、SNSなどでそのインパクトある映像を目にしていた方も多いのではないでしょうか。『Don’t drop the Cake』です。 タイトル通り、このゲームの目的はシンプル。「ケーキを地面に落とさないこと」。 プレイヤーは薄暗い廊下で、まな板(のような皿)に乗ったホールケーキを両手で捧げ持ち、ひたすら目的地を目指して歩きます。どんな幽霊が出ようが、どんな怪奇現象が起きようが、ケーキだけは死守しなければなりません。 このゲームの操作方法は非常に独特です。移動はキーボードのWASDで行うのですが、Wで前進、A/Dで体の向きを回転させるという、いわゆる「ラジコン操作」に近い感覚です。ではマウスは何をするのかというと、なんと「視点操作」ではなく、「手元のまな板の傾き調整」に使います。 これが実に天才的で、かつ意地悪なジレンマを生み出すのです。 ホラーゲームですから、当然、薄暗い廊下の先から何かが飛び出してくるかもしれない。だから視線は前を向いて警戒したい。しかし、前ばかり見ていると、手元のバランスが崩れてケーキが滑り落ちそうになる。慌てて手元を見ると、今度は視界の端で何かが動いたような気がして…。 人間が同時に処理できない二つの視覚情報を、ゲームシステムとして強制的に突きつけてくるのです。その状況に置かれた私は、恐怖で震えながらも、同時に「これ、何の罰ゲームですか?」と自嘲気味に笑ってしまうような、非常に新鮮な体験を味わいました。 プレイヤーに適切なストレスを与えることこそがゲーム制作の妙だとするなら、この「視線のコントロール」と「バランス維持」の掛け合わせは、まさに発明と言えるでしょう。 また、「逃げる」「隠れる」といったホラーゲームの一般的な動詞に、「(ケーキを)落とさないように」というユニークな副詞を加えた点も秀逸です。説明不要で誰でもルールを理解でき、それでいて今まで体験したことのないスリルを味わえる。 ジャンプスケアが苦手な私が、製品版を購入して最後までプレイできるかは正直怪しいところですが(苦笑)、この強烈なフックと中毒性は、日本を飛び越えて世界中で「ケーキ運び」のムーブメントを起こすポテンシャルを秘めていると感じました。 不安ごと:忘れかけていた“ネット怪談”へのノスタルジーと、儀式のロマン 続いて体験したのは、すでにSteamでも配信されているホラーシミュレーションゲーム『不安ごと』です。こちらは先ほどのケーキ運びとは打って変わって、静かに、しかし確実に精神を削ってくるタイプのホラー作品でした。 コンセプトは「ネット上の怪談を、自宅(ゲーム内のマンション)で再現する」というもの。 SNSやAIの台頭によって形を変えつつある現代ですが、かつてのインターネットには「ひとりかくれんぼ」や「異世界に行く方法」といった、現実を浸食するような怪談が数多く流布していました。このゲームは、そんな身元不明の怪談たちを収集し、自室で一つ一つ検証できるという、オカルト・ホラーマニアにとっては天国(?)のようなシミュレーターゲームなのです。 プレイ前、私は最近流行りの「異変探し」のような、間違い探し的なパズルゲームを想像していました。しかし実際は少し違って、テキストを読み込み、そこに書かれた手順を狂いなく実行する。「怪談を再現する」というプロセスそのものに重きを置いた、非常に実験的なゲームだったのです。 多くのホラーコンテンツは、怪談の果てに現れる「何か(幽霊や怪物)」という“結果”に注目しがちです。しかし本作は、そこに至るまでの「手順」や「行為」自体が持つ楽しさに焦点を当てています。これって、実はすごく「ロマン」があると思いませんか? 大人になった私たちは、もはやネット上の怪談に触れても「そんなの嘘に決まってる」と頭で考えてしまいます。でも、このゲームではひたすらネット上の怪談を読んで窓の外を眺めたり、特定の手順を踏んだりしていると、子供の頃にネットの怪談を読んで感じた「もしかしたら、本当に起きてしまうかもしれない」という、あの原初的なときめき――それが恐怖の鼓動なのか、期待の鼓動なのかは分かりませんが――が、鮮やかに蘇ってくるのです。 会場では、冷や汗をかきながら何とか一つの怪談を再現することに成功しました。そして、その瞬間に思いました。「あ、これは家に帰って一人でじっくりやりたい」と。そうして私は、逃げるように(あるいは楽しみを取っておくために)席を立ちました。 かつてネット怪談に胸を躍らせた記憶がある方、あるいはテキストを分析して忠実に実行するという行為に喜びを感じる方には、ぜひ触れていただきたい一作です。 Don’t stop smiling:恐怖と笑顔のパラドックス、そして顔面筋肉痛 偶然にも、今回は「Don’t」から始まるゲームを二つ体験することになりました。三つ目にご紹介するのは、『Don’t stop smiling』。その名の通り、「笑顔を止めてはいけない」ホラーシミュレーションゲームです。 以前記事で見かけた時はVRゲームかと思っていたのですが、実際の展示ではノートPCのWebカメラ一つでプレイが可能でした。 このゲームもまた、学校の廊下のような場所をひたすら進んでいくという点では、最初にご紹介したケーキのゲームと似ています。しかし、プレイヤーに課せられるルールはより身体的で、かつ異質です。「カメラに向かって、常に笑顔を維持し続けること」。 目の前にどんな障害物が現れようとも、恐ろしい怪異が飛び出してこようとも、プレイヤーは口角を上げていなければなりません。恐怖で顔を引きつらせながらも無理やり笑顔を作るという状況は、それだけで作品の不気味さを増幅させます。 しかし同時に、「作り笑いでも脳は楽しいと錯覚してメラトニンを出す」という説は本当なのか、このあまりに理不尽で滑稽な状況に、プレイしながら思わず本当の笑いがこみ上げてくる瞬間が何度もありました。恐怖と笑いは紙一重と言いますが、それをシステムレベルで体感させられるとは。 そして何より、後半になるにつれて顔が痛くなってくるのです(苦笑)。後で知ったのですが、笑わなくていい休憩区間もあるそうで…。「ゲーム中ずっと笑い続けなければならない」という身体的な拘束は、ある意味でどんなホラー演出よりも強烈な「恐怖」かもしれません。 もちろん、ただ笑っていればいいだけのゲームではありませんでした。時には目を閉じなければならなかったり、笑顔以外の口の動きを求められたりと、単なる一発ネタで終わらせないためのギミックもしっかり研究されている印象を受けました。 薄暗い会場内でのプレイでしたが、カメラが私の表情の変化を驚くほど正確にキャッチしていた点にも拍手を送りたいと思います。この技術的な精度の高さがあってこそ、この奇妙な没入感は成立しているのでしょう。製品版でも、このユニークな恐怖(と顔面の痛み)が多くのユーザーに届くことを期待しています。 Recommended by Godaka:キュレーターが選ぶ、世界の“奇ゲー”たち