Webtoon好きの読者に一言だけ聞こう。
Webtoonって、どうやってデビューするのか?
今の時代はWebtoonを連載できるプラットフォームも増えて、その収益性も高まったゆえにいくつかの共通認識が生まれているようにみえる。
チームプレイはもちろん、仕事の効率化を求めつつ、売れる作品を作ること。そうやってできた作品を連載できるとこへ持ち込むか、コンテストに入賞して連載のチャンスを狙うかなど、連載への道のりは人それぞれであり、かつ様々だ。
まずこのデビューのルートについては、韓国も昔と今でさほどの差はなかった。でも今回紹介する作品は、今の理屈では考えられない、ゆえに伝説になったあるアマチュア作家の作品である。
昔、韓国のWebtoon市場を支える一つの登竜門:チャレンジマンガ
[blogcard url=”https://comic.naver.com/challenge”]
「チャレンジㅡマンガ」を聞いたことはあるだろうか。
今まで数えられないほどの作品を生み出した連載枠のことだ。
(2014年基準、チャレンジマンガに活動していたアマチュア作家の数は139,789名)
チャレンジマンガはNAVER WEBTOONの歴史とともに存在してきた。20年ほどの時間がたった今も昔と比べてほぼ変わってなく、アマチュア漫画家の作品が非定期的に連載されている。以上のリンクに入った読者は、誰でもすべての作品を閲覧できるし、点数(星マーク)をつけることで作品を評価することができる。
チャレンジマンガの中、読者からいい評価を得られた作品はベストチャレンジマンガに昇格される。ベストチャレンジマンガになってからも定期的に連載ができ、かついい評価を得られた作品は正式連載を狙ってみても良いだろう。一番理想的なルートでいえば、本社のNAVER WEBTOONと連載契約を結ぶこと。もちろん、別にNAVERじゃなくても他のプラットフォームから連載の提案が入ることもある。
何にせよ、経歴も経験もないアマチュアWebtoon作家においてチャレンジマンガという枠は機会の場所であり、いい作品を常に求めているプラットフォーム側としては未来のヒット作品を発掘できる出会いの場所でもあるのだ。
Webtoon好きなら誰しもが知っているような作品。その大多数がチャレンジマンガで生まれる時代があった。
『ナイト・ラン』(2009)
『殺人者パラドックス』(2010)
『恋愛革命』(2013)
『外見至上主義』(2014)
『マスク・ガール』(2015)…
Webtoon好きなら名前くらいは聞いたかもしれない多くの作品が、このチャレンジマンガを通して生まれたといっても過言ではない。 Webtoonを作り出す制作会社が立ち上がり、チームで契約を結んで作品の連載を始めるのが一般化してきた今の時代。様々な事件の影響もあり(できれば、のちに取り上げてみたいが)、今はどんどん忘れられつつあるこのチャレンジマンガの存在を、Webtoon好きの皆さんには覚えてもらいたい。
では、今回紹介する作品は果たして何だろうか。
それはWebtoon歴史上、一番長い間チャレンジマンガとして連載を続けた伝説の作品『銀河!은하!』である。
(出展:https://comic.naver.com/bestChallenge/list?titleId=8640)
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[blogcard url=”https://blog.naver.com/pictured”]
👆️これは現時点で原作を連載している作家のブログリンク。
NAVER WEBTOONと正式契約を結び、今まで580話を連載した(2009年から今まで)。ちなみに今NAVER WEBTOONで正式連載されているのはリメイク版。原作バージョンはもうすでに15年間連載を続けている。
内容は極めてシンプル。
宇宙から来た外界文明によって滅んでしまった地球。その中には銀河連盟に命を救われた人間の少女「レラ」がいた。彼女は宇宙人の養子になり、モルランという惑星で育てられる。周りとは違う見た目、幼弱な身体を持っているなど、自らのアイデンティティに悩んでいた彼女はある日、外部から襲ってきた侵略者に向き合うことになる。今の家族を守るために立ち向かうことを決した彼女は、今まで知らなかった自らの力に目覚め始める。
生命はいつか消える。宇宙はそうではない。しかしこの宇宙を照らせるのは、ただ、生命という灯火のみだ。(著者訳)
『銀河!』第1話
おそらくリンクに入って作品を実際ご覧になった人にはわかると思うが、この作品には一つだけ、すごく特徴的なところがある。 それは、すべての作画を一人の作家がマーカーを使って描いているということ。チーム制でもなく、タブレットを使っているわけでもない。ひたすら一人がアナログで描いた作品を、作家は15年間連載しているのだ。
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原作者が2010年度に作った『銀河!』のアニメーション。大学の課題として提出したという。マーカー150本を使ったと言われているこの作品は、作家一人で1000枚を描いたことで有名になった。
チャレンジマンガ界ではもはや知らない人がいないほどの認知度を誇る『銀河!』。そんな人気作品が長い間連載契約を結べなかった理由も、そのとんでもない制作方法にあった。連載周期の不安定さ、アナログのゆえに出てしまう作画の起伏。10年を超える時の積み重ねでも、プロの作家として活動するのはまだ遠い話のようだった。
むしろこんなクセの強い作画にもかかわらず、ベストチャレンジマンガにまで上れたのがすごいという見解もある。正式連載までは至らなかったものの、当時のベストチャレンジマンガは準プロ級の作家たちが長い間準備してきた作品を読者に披露する場所でもあったためだ。 運が良ければ正式連載まで数か月、長いと数年まで無給連載しなければならない。その中にはベストチャレンジマンガで寿命が尽きた悲運の作品もたくさん存在したわけだ。
そんな状況の中で、『銀河!』が15年も連載できたのは、作家本人のイレギュラーな熱量のおかげもあるが、単純に「作品が面白かった」から読者に長い間愛されたせいでもある。
見た目だけではわからない、読者を魅了させた『銀河!』の強みはその中身にあった。
宇宙が広い分、『銀河!』はきれいで、美しいものばかりお見せできない作品です。その中でもデウズと略奪団の話が特にそうです。ガリクス戦争の以降、宇宙はもはや銀河連盟を除けば道徳性と社会がほぼ破滅した状態に落ちます。星の破壊と種族の間で行われる内戦・略奪・侵略のせいで、居場所をなくした多くの難民が存在するのです。残念ながら、これからもこういう崩壊した社会と、そこから生み出された犠牲者たちが数えられないほど登場する予定です。また、こういう社会的な問題は地球でもたくさん行われているので、それに対する省察を目指しています。(著者訳)
グリフォン、『銀河!』の原作者
最後、NAVER WEBTOONにたどり着くまで『銀河!』は長い道のりをたどっていた。作画担当を雇い、リメイク版を作った後もNAVERには入れず、様々なプラットフォームを転々した『銀河!』。
しかし、原作の方(マーカー版)は連載する場所をブログに変えただけで、15年も絶えずにアップロードを続けている。紆余曲折を経て故郷のNAVERに戻ってきた今も、我々はいつでもマーカーで塗りつぶされている「レラ」に出会えるのだ。
作家が死亡した時の計画: 皆さんご承知の通り、人は誰でも急になくなる可能性があります。明日ビルがつぶれるかもしれないし、火事が起きるかもしれない。どこから飛び出た車にひかれるかもしれませんね。 昔、知り合いの作家さんがトラックにひかれて亡くなった以来、自分もなくなった場合を考えるようになりました。 かなり多くの作家さんが不意の事故に出会い、亡くなったことで作品の連載が続かないか、読者が全く状況をつかめないことが沢山あります。 私は読者の皆さんが帰ってこない作家をひたすら待ち続け、しばらくたってから死んだことに気付くような、そんなムカツク経験をしてほしくないんです。これは11年間連載を続けてきた自分においても、深刻な不名誉です。(著者訳)
グリフォン、『銀河!』の原作者
「どれだけ売れるか」「どうやったら効率的にWebtoonを作れるか」が問われる今の時代。
そのもとになる歴史には、自分がこの宇宙からなくなっても読者に「作品」を届けたかった一人の作家がいた。
たまには足を止めて、夜空を見上げたくもなるあなたにおすすめしたいこの作品は…
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パク ジュヒョン
1998年生まれ、韓国出身。今年から日本のアニメスタジオで働いている。15年以上Webtoonを読み続け、先読みの課金に10万円以上を費やしたことに気付く。現在は課金で費やした分をビュー数で稼ぎたい気持ちでWebtoonの記事を書いている。