言葉の壁は「情熱」で越えられるのか? 台北で出会った「韓国インディー」の現在地 ― Taipei Game Show 2026 レポート

ニーハオ! SKOOTA編集部のイ・ハナと申します。 皆様、モブくんが届けてくれた「私の魂が太ももに挟まれた話(G-EIGHTレポート)」や「お気に入りゲーム紹介(TpGSレポート)」は、もうお読みになりましたでしょうか? 彼が台湾の熱気に包まれながら楽しんでいたその隣で、実はわたくし、少しだけ冷や汗をかいておりました。 なぜなら私、中国語はおろか英語も自信がないという、まさに「語学力:サバイバルレベル」の状態で台湾に上陸してしまったからです。 「まあ、何とかなるでしょう!」という謎の自信は、空港に降り立った瞬間に揺らぎ始めました。しかし、ここで奇跡が起きます。なんと、台湾のゲーマーの方々の多くが、私の拙い日本語を理解してくださるではありませんか! アニメやゲームの影響でしょうか、簡単な日本語であればスムーズに意思疎通ができる環境に、私は心底救われました。 とはいえ、やはり自分が直接、海外のクリエイターに深い話を伺うのはハードルが高いのも事実。そんな中、今回のTaipei Game Show(以下、TpGS)のインディーゲームエリア「Indie House」には、驚くほど多くの韓国インディーゲームが出展されていました。 普段、日本のイベントではなかなか接する機会のない母国のゲームたち。言葉の壁に少し疲れていた私にとって、そこは開発者の方と直接深い話ができる、数少ない貴重な場所でもありました。 というわけで今回は、あえて注目の期待作『NAMMO』などは(モブくんのレポートに譲るとして)少し置いておきましょう。私が会場で出会ったのは「まだ見ぬ韓国インディーゲームの可能性」といっても過言ではない、4つの作品です。それでは、ご紹介させていただきます。 🦀 スーパーキングクラブシミュレータ:235円で買える、破壊とカニのユートピア まず最初にご紹介いたしますのは、Skago Gamesさんが制作した『スーパーキングクラブシミュレータ(Super King Crab Simulator)』です。 タイトルからして既に「何か」が起きていますが、内容はさらに強烈です。プレイヤーは巨大なズワイガニとなり、人間に捕らわれた同胞を救い出すために、平和な海岸都市を慈悲なく破壊し尽くすという、なんともぶっ飛んだコンセプトのアクションゲームとなっております。 一見すると、いわゆる「バカゲー(褒め言葉)」の類に見えますし、実際にそうなのですが、コントローラーを握ってみると、その手触りの良さに驚かされました。 カニになって街を破壊するなんて、言葉にするとなかなか想像しにくい体験ですが、あえて例えるなら昔遊んでいた『Prototype』シリーズや『GTA』シリーズといった、かつてのオープンワールドゲームを思い出させるプレイ感に近い印象でしょうか。 人や建物がひしめく箱庭のような空間を、カニ独自の動き(とはいえ非常に高速です!)で縦横無尽に駆け巡り、目に入るオブジェクトを片っ端からハサミで粉砕していく。「新しい」というよりは、どこか「実家のような安心感」すら覚える、プリミティブな破壊の楽しさがそこにはありました。 そして、私がこのゲームを是非レポートに残したいと思ったもう一つの理由は、ローポリゴンのシンプルなグラフィックの中に隠された、驚くべき「ディテール」へのこだわりです。 これはもしかすると、私のような韓国出身のプレイヤーにしか伝わらないポイントかもしれませんが…マップ上の建物のデザインや看板のテキストが、思わず笑ってしまうほど「リアルな韓国」なのです。 あえてローカライズされずハングルそのままで残されておりましたが、飲食店のメニューや巨大な商号、そして何より、お店や住宅の裏手に雑多に置かれた室外機や、それを囲むブロック塀の質感。日本や台湾の風景とは微妙に異なる、しかし韓国人なら誰もが「あるある!」と思える生活感あふれる風景が、絶妙な解像度で再現されています。この「知っている街」をカニになって破壊する背徳感は、なかなかに得難い体験でした。 開発者の方の遊び心も随所に光ります。「美味しく破壊しろ」というキャッチコピーや、レベル(Level)の表記をキングクラブにかけて「Kevel」とするなど、思わずクスリとしてしまう小ネタが満載です。こういった細かい発見が積み重なることで、単なるアクションゲーム以上の愛着が湧いてくるのですね。 そして何より強調したいのが、そのコストパフォーマンスです。Steamでの価格はなんと235円(日本基準)。 同胞を救うために街を壊すという明快すぎるストーリー、誰もがすぐに楽しめる直感的な操作、そして作り込まれた小ネタの数々。これらがこの価格で提供されていることは、ある意味で奇跡的です。「安かろう悪かろう」ではありません。「暇だし、カニになって街でも壊してみるか?」という軽い気持ちに、全力で応えてくれる最高のエンターテインメントなのです。 もし今、あなたが少し退屈しているなら、迷わずこのカニの甲羅を被ってみることをお勧めいたします。 🎒 下校道:ノスタルジーという名の恐怖、2010年代の教室にて 次にご紹介いたしますのは、先ほどの陽気なカニの世界とは打って変わって、静寂と闇が支配するサバイバルホラーゲーム、『下校道(Hagyo-gil: The Way Home)』です。制作は、「スタジオ不完全燃焼」さん。 会場でプレイできたデモ版は10分ほどの短い内容でしたが、その密度たるや、短編映画一本を見終えたかのような重厚な体験でした。 物語は至ってシンプル。ある日、学校の教室で一人目覚めた主人公が、外へ出るために手がかりを集めて脱出を試みるというものです。何の説明もなく放り出される導入には戸惑いますが、探索を進めるにつれ、古びた設備や封鎖された出入り口といった不穏な違和感に気づき、「この学校はどこかおかしい」と肌で理解することになります。 そして最後には、制服を着た女子学生の姿をした「何か」が現れ、プレイヤーは手に持ったモップで必死に抵抗することになるのですが…ええ、私は勝てませんでした。モップを握りしめたまま、無惨にもゲームオーバーとなりました(涙)。 「見知らぬ場所に閉じ込められる」という設定自体は、ホラーゲームにおいて決して珍しいものではありません。しかし、この作品が他の追随を許さない圧倒的な魅力を持っているとすれば、それは「狂気的なまでの空間の再現度」にあります。 先ほどの『スーパーキングクラブシミュレータ』が、シンプルなグラフィックの中に記号的な「韓国らしさ」を込めた作品だとするなら、この『下校道』は、空気や湿度、当時の時間までもそのままゲームの中に閉じ込めようとしたかのような、恐ろしいほどのリアリズムを追求しています。 舞台となるのは、おそらく2010年代の韓国の中学校、あるいは高校でしょうか。 まさに私が学生時代を過ごした時期と重なるその風景は、ただ「リアル」なだけではありません。教室の空気の匂い、廊下に響く足音、机の質感…視覚情報だけのはずなのに、かつての記憶が呼び覚まされ、五感が刺激されるような錯覚に陥りました。国籍を問わず、インディーゲームという枠組みの中でこれほどのグラフィック表現にお目にかかることは、そうそうないでしょう。 ただ懐かしいだけなら良い思い出ですが、その「あまりにも慣れ親しんだ空間」に、少しずつ異質なノイズが混ざり込んでいく過程こそが、このゲームの真の恐怖です。 よく出来たホラー映画の導入部を自らの足で歩いているかのような没入感。残念ながら現時点ではSteamなどのオンラインストアには公開されていないようですが、いつか製品版として世に出た暁には、ぜひ日本の皆様にもこの「美しくも恐ろしい下校道」を体験していただきたいと強く願っております。 🍽️ GLUTTONY:食欲こそが力! 悪魔的「満腹」ハック&スラッシュ 三番目にご紹介するのは、Team