
ニーハオ! SKOOTA編集部のイ・ハナと申します。 皆様、モブくんが届けてくれた「私の魂が太ももに挟まれた話(G-EIGHTレポート)」や「お気に入りゲーム紹介(TpGSレポート)」は、もうお読みになりましたでしょうか?
彼が台湾の熱気に包まれながら楽しんでいたその隣で、実はわたくし、少しだけ冷や汗をかいておりました。
なぜなら私、中国語はおろか英語も自信がないという、まさに「語学力:サバイバルレベル」の状態で台湾に上陸してしまったからです。
「まあ、何とかなるでしょう!」という謎の自信は、空港に降り立った瞬間に揺らぎ始めました。しかし、ここで奇跡が起きます。なんと、台湾のゲーマーの方々の多くが、私の拙い日本語を理解してくださるではありませんか! アニメやゲームの影響でしょうか、簡単な日本語であればスムーズに意思疎通ができる環境に、私は心底救われました。
とはいえ、やはり自分が直接、海外のクリエイターに深い話を伺うのはハードルが高いのも事実。そんな中、今回のTaipei Game Show(以下、TpGS)のインディーゲームエリア「Indie House」には、驚くほど多くの韓国インディーゲームが出展されていました。
普段、日本のイベントではなかなか接する機会のない母国のゲームたち。言葉の壁に少し疲れていた私にとって、そこは開発者の方と直接深い話ができる、数少ない貴重な場所でもありました。
というわけで今回は、あえて注目の期待作『NAMMO』などは(モブくんのレポートに譲るとして)少し置いておきましょう。私が会場で出会ったのは「まだ見ぬ韓国インディーゲームの可能性」といっても過言ではない、4つの作品です。それでは、ご紹介させていただきます。
🦀 スーパーキングクラブシミュレータ:235円で買える、破壊とカニのユートピア

と呼び掛けているようにも見えますね。
まず最初にご紹介いたしますのは、Skago Gamesさんが制作した『スーパーキングクラブシミュレータ(Super King Crab Simulator)』です。
タイトルからして既に「何か」が起きていますが、内容はさらに強烈です。プレイヤーは巨大なズワイガニとなり、人間に捕らわれた同胞を救い出すために、平和な海岸都市を慈悲なく破壊し尽くすという、なんともぶっ飛んだコンセプトのアクションゲームとなっております。
一見すると、いわゆる「バカゲー(褒め言葉)」の類に見えますし、実際にそうなのですが、コントローラーを握ってみると、その手触りの良さに驚かされました。
カニになって街を破壊するなんて、言葉にするとなかなか想像しにくい体験ですが、あえて例えるなら昔遊んでいた『Prototype』シリーズや『GTA』シリーズといった、かつてのオープンワールドゲームを思い出させるプレイ感に近い印象でしょうか。
人や建物がひしめく箱庭のような空間を、カニ独自の動き(とはいえ非常に高速です!)で縦横無尽に駆け巡り、目に入るオブジェクトを片っ端からハサミで粉砕していく。「新しい」というよりは、どこか「実家のような安心感」すら覚える、プリミティブな破壊の楽しさがそこにはありました。


Steamページより引用しております。
そして、私がこのゲームを是非レポートに残したいと思ったもう一つの理由は、ローポリゴンのシンプルなグラフィックの中に隠された、驚くべき「ディテール」へのこだわりです。
これはもしかすると、私のような韓国出身のプレイヤーにしか伝わらないポイントかもしれませんが…マップ上の建物のデザインや看板のテキストが、思わず笑ってしまうほど「リアルな韓国」なのです。
あえてローカライズされずハングルそのままで残されておりましたが、飲食店のメニューや巨大な商号、そして何より、お店や住宅の裏手に雑多に置かれた室外機や、それを囲むブロック塀の質感。日本や台湾の風景とは微妙に異なる、しかし韓国人なら誰もが「あるある!」と思える生活感あふれる風景が、絶妙な解像度で再現されています。この「知っている街」をカニになって破壊する背徳感は、なかなかに得難い体験でした。
開発者の方の遊び心も随所に光ります。「美味しく破壊しろ」というキャッチコピーや、レベル(Level)の表記をキングクラブにかけて「Kevel」とするなど、思わずクスリとしてしまう小ネタが満載です。こういった細かい発見が積み重なることで、単なるアクションゲーム以上の愛着が湧いてくるのですね。
そして何より強調したいのが、そのコストパフォーマンスです。Steamでの価格はなんと235円(日本基準)。 同胞を救うために街を壊すという明快すぎるストーリー、誰もがすぐに楽しめる直感的な操作、そして作り込まれた小ネタの数々。これらがこの価格で提供されていることは、ある意味で奇跡的です。「安かろう悪かろう」ではありません。「暇だし、カニになって街でも壊してみるか?」という軽い気持ちに、全力で応えてくれる最高のエンターテインメントなのです。
もし今、あなたが少し退屈しているなら、迷わずこのカニの甲羅を被ってみることをお勧めいたします。
🎒 下校道:ノスタルジーという名の恐怖、2010年代の教室にて

INDIE WAVERMAKERSのアワードも受賞されている模様。
次にご紹介いたしますのは、先ほどの陽気なカニの世界とは打って変わって、静寂と闇が支配するサバイバルホラーゲーム、『下校道(Hagyo-gil: The Way Home)』です。制作は、「スタジオ不完全燃焼」さん。
会場でプレイできたデモ版は10分ほどの短い内容でしたが、その密度たるや、短編映画一本を見終えたかのような重厚な体験でした。
物語は至ってシンプル。ある日、学校の教室で一人目覚めた主人公が、外へ出るために手がかりを集めて脱出を試みるというものです。何の説明もなく放り出される導入には戸惑いますが、探索を進めるにつれ、古びた設備や封鎖された出入り口といった不穏な違和感に気づき、「この学校はどこかおかしい」と肌で理解することになります。
そして最後には、制服を着た女子学生の姿をした「何か」が現れ、プレイヤーは手に持ったモップで必死に抵抗することになるのですが…ええ、私は勝てませんでした。モップを握りしめたまま、無惨にもゲームオーバーとなりました(涙)。
「見知らぬ場所に閉じ込められる」という設定自体は、ホラーゲームにおいて決して珍しいものではありません。しかし、この作品が他の追随を許さない圧倒的な魅力を持っているとすれば、それは「狂気的なまでの空間の再現度」にあります。


先ほどの『スーパーキングクラブシミュレータ』が、シンプルなグラフィックの中に記号的な「韓国らしさ」を込めた作品だとするなら、この『下校道』は、空気や湿度、当時の時間までもそのままゲームの中に閉じ込めようとしたかのような、恐ろしいほどのリアリズムを追求しています。
舞台となるのは、おそらく2010年代の韓国の中学校、あるいは高校でしょうか。 まさに私が学生時代を過ごした時期と重なるその風景は、ただ「リアル」なだけではありません。教室の空気の匂い、廊下に響く足音、机の質感…視覚情報だけのはずなのに、かつての記憶が呼び覚まされ、五感が刺激されるような錯覚に陥りました。国籍を問わず、インディーゲームという枠組みの中でこれほどのグラフィック表現にお目にかかることは、そうそうないでしょう。
ただ懐かしいだけなら良い思い出ですが、その「あまりにも慣れ親しんだ空間」に、少しずつ異質なノイズが混ざり込んでいく過程こそが、このゲームの真の恐怖です。 よく出来たホラー映画の導入部を自らの足で歩いているかのような没入感。残念ながら現時点ではSteamなどのオンラインストアには公開されていないようですが、いつか製品版として世に出た暁には、ぜひ日本の皆様にもこの「美しくも恐ろしい下校道」を体験していただきたいと強く願っております。
🍽️ GLUTTONY:食欲こそが力! 悪魔的「満腹」ハック&スラッシュ
三番目にご紹介するのは、Team FGさんが開発中のローグライクアクションゲーム、『GLUTTONY』です。
「暴食」を意味するタイトルの通り、このゲームのコンセプトは非常にユニークかつ本能的です。プレイヤーは「暴食の悪魔」となり、地獄に蔓延る「食べ物の悪魔(Food Devil)」たちをなぎ倒し、文字通り「食らい尽くして」強くなる。なんとも食欲(?)をそそる設定ではありませんか。
ゲームの基本システムは、いわゆる『Vampire Survivors』や『The Binding of Isaac』を彷彿とさせる、見下ろし型のハック&スラッシュです。四方八方から押し寄せる敵の群れを蹴散らし、ステージをクリアして新たな能力やアイテムを解禁していく。このジャンルがお好きな方なら、すぐにピンとくる馴染み深いスタイルでしょう。
しかし、本作が既存のゲームと一線を画すのは、その「食事」システムにあります。 通常のハック&スラッシュでは敵を倒すことが目的ですが、このゲームでは「敵を倒して、食べる」までがワンセットです。体力が落ちてターゲットになった敵(食べ物の形をしているモンスター)を食べると、体力が回復するだけでなく「満腹度」が上昇します。
そして、この満腹度が最大に達すると、強力な必殺技である「ベリーバースト(Belly Burst)」が発動! この間、プレイヤーは圧倒的な力を手に入れ、敵をちぎっては投げの無双状態に突入します。 ですが、美味しい時間は長くは続きません。時間が経てば満腹度はゼロに戻り、プレイヤーは再びひ弱な状態へ…。この「食べて強くなり、暴れて、また腹を空かせる」という緊張と緩和のサイクルが、非常にスピーディーかつ中毒性高く設計されているのです。

操作が簡単でやりやすい印象でしたね。
Steamページより引用しております。

Steamページより引用しております。
会場で驚かされたのは、その体験版のボリュームでした。 イベント展示にも関わらず、なんと異なる能力を持つ3人のキャラクターを最初からプレイ可能という大盤振る舞い。「体験版でここまで遊ばせてしまって良いのですか?」と、こちらが心配になるほどです。 それぞれのキャラクターでプレイスタイルがガラリと変わるため、全てを遊び尽くすにはかなりの時間が必要ですが、会場ではその高難易度と奥深さに魅了され、何度も列に並び直す猛者の姿も見られました。
これは裏を返せば、「一度プレイすれば絶対にハマる」という開発者の方の自信の表れなのかもしれません。 その自信通り、カートゥーン調のポップなアートワークと、爽快かつ手ごたえのあるアクションは、一度味わうと病みつきになる「味」がしました。
『GLUTTONY』は今年、Steamにてアーリーアクセスを開始予定とのこと。現在Steamストアページでは体験版も公開されておりますので、台北の熱気を感じてみたい方は、ぜひダウンロードしてその「暴食」の世界を体験してみてください。
🍳 Lone Chef:究極の味を求め、ドット絵の荒野を行く

最後にご紹介するのは、メトロイドヴァニア形式のアクションアドベンチャーゲーム、『Lone Chef』です。
実はこの作品、私がTpGSに参加する前から密かにウィッシュリストに入れて注目していたタイトルでした。 きっかけは、Steamで見かけた開発中のゲーム画面です。そこに映し出されていたのは、息をのむほど緻密で滑らかなドットアニメーションと、一目見ただけで印象に残る世界観。「世界で一番美味しい料理を探して冒険に出る」という、ロマンあふれる設定に目を引かれたわけでした。
これまでご紹介した3つのゲームが、特定のこだわりやアイデアを一点突破で突き詰めた作品だとするなら、この『Lone Chef』は、ゲームを構成するすべての要素において一切の妥協を許さない、開発者の「執念」とも呼べる熱意が感じられる野心作です。
特に「メトロイドヴァニア」というジャンルは、インディーゲーム開発者にとって非常に高い壁でもあります。 広大なマップの探索、複雑に入り組んだレベルデザイン、アイテムによる能力解禁と行動範囲の拡大…。『Hollow Knight』のような傑作の登場により、プレイヤーの目が肥えているのも壁を高める要因の一つでしょう。単に道を作るだけでなく、そこに「探索の喜び」を埋め込む作業は、並大抵の労力ではありません。
しかしTpGSの会場、そして後にSteamにて公開された体験版をプレイして確信しました。このゲームは、その高いハードルを飛び越えられるポテンシャルを秘めています。

気持ちよかったです。

物語の始まりは、最高の料理人を夢見る主人公が、人々に料理を振る舞うために自分のお店を立てる物語から始まります。しかし、完成の喜びも束の間、謎の敵の襲撃によってお店は無惨にも破壊されてしまうことに。「世界で一番美味しい料理を献上せよ」という言葉を残して去った敵を追い、主人公は広大な草原へと旅立ちます。
特筆すべきは、やはりそのクオリティです。 動画で見ていた美しいグラフィックは、実際に動かしてみても色褪せることはありませんでした。キャラクターの細やかなモーション、背景の書き込み、そして世界観を彩るBGM。体験版の段階でありながら、「これ、本当にインディーゲームなのか?」と疑いたくなるほどの完成度です。
もちろん、体験版である分UI周りにまだ少し粗さは見られますが、それを補って余りある魅力がこの冒険には詰まっています。多くのメトロイドヴァニア作品が開発途中で力尽きてしまう中で、これほどのクオリティでデモ版の公開にまで至ったという事実だけでも、拍手を送りたい気持ちです。
モブが以前のレポートにて今後注目されるであろうゲームとして『NAMMO』を挙げたなら、私イ・ハナが自信を持って推したいのは、この『Lone Chef』です。 現在の注目度は、そのクオリティに比べてあまりにも低すぎるとまで感じております。この記事を読んで少しでも気になった方は、ぜひSteamで配信中の体験版をプレイしてみてください。日本語にも対応しておりますので、言葉の壁を気にせず、美食と冒険の世界へ飛び込んでみることをお勧めします。
「良いものは良い!」台湾ユーザーの愛すべき直球

本題のゲーム紹介を終えたところで、最後に改めて会場の雰囲気について触れさせてください。 今回、韓国ブースを回っていて何より面白かったのは、台湾ユーザーたちの反応でした。
彼らは本当に正直で、情熱的です。インディーゲームへの関心が非常に高く、プレイしたゲームに対して率直なフィードバックを返してくれます。「良い」と思えば満面の笑みでサムズアップし、「惜しい」と思えばその場で素直に意見を伝える。そこに建前や遠慮はありません。 何より驚いたのは、言葉が通じなくても、身振り手振りや表情で「自分の感情」を伝えようとする姿勢です。
対する韓国の開発者たちも負けていませんでした。 多くのブースには中国語の通訳スタッフが配置されており、開発者自身も身を乗り出して、ゲームの魅力を伝えようとしていました。「もっと知りたい」という台湾ユーザーの熱量と、「もっと伝えたい」という韓国開発者の熱意。この相性の良さが、会場の熱気を作っていたように思います。
もう一つ、今回の取材を通じて強く感じたのは、韓国インディーゲームの「グローバル志向」です。
今回私が触れたゲームの多くは、発売前あるいは開発段階であるにもかかわらず、韓国語、英語、日本語はもちろん、中国語、さらにはフランス語やスペイン語までサポートしているケースが多々見られました。 もちろん、近年のAI技術の発展がローカライズのコストを下げた側面もあると思いつつ、それ以上に「最初から世界を相手にしている」という開発者たちの気概を感じずにはいられませんでした。
台湾の地で感じた、言葉よりも速く伝わる「熱」。 そして、その熱を少しでも落とさず世界中に届けようとする開発者たちの挑戦。 TpGSは、そんなインディーゲームの現在地と未来を肌で感じられる、最高の場所でした。
今回のレポートが、皆様の新しい「推しゲーム」を見つけるきっかけになれば幸いです。 それでは、また次のイベントでお会いしましょう! 再見(ツァイチェン)!
